淘汰の国のアリス | ナノ




「…………………」
アリスは強く瞳を閉じた。人はとてつもない恐怖を目の当たりにするとそれを拒絶しようとする。事実、この距離で弾が外れるわけがない。ああ、どんなに痛いのだろう。現実世界にいてまず銃に撃たれるような事にすら及ばない、平和な世界を当たり前と過ごしていた甘さ故だった。想像つくはずがない。傍らで苦しんでいる人がいても実感が湧かない。

だがおかしなことに、アリスの体には痛みと呼ばれる感触がやってこない。かわりに、生暖かい何かと自分の体にのし掛かる謎の重み。あったかい。わずかに動いている。いや、生きて…いる?

「………」
耳には銃声、鼻には硝煙の火薬っぽい臭いが残る。では、これは?得体のしれない物に余計に怖く感じた。

「……アリス…大丈夫?」
耳を疑った。アリスは恐る恐る瞼を開けた。その声は、もっと後で聞くはずだったのに…

「……嘘じゃ…なぜ…貴様が…」
まさかの邪魔者にローズマリーが唖然としている。ピーターも信じられないでいた。アリスは、信じたくなかった。だが、現実は現実。

「……ね…猫さ…ん…………?」

そこには、アリスの膝元には、背中に穴を開けたチェシャ猫が倒れていた。





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