淘汰の国のアリス | ナノ

では一体、どうすればよいのか、頭の中がとっちらかって収集がつかなくなってきた。いわゆる、混乱。もう泣き言を言うか神頼みしかない、最悪の選択肢が目の前に表れたようだ。否。

「ほぉ、はずしたか…」

表れたのは、最悪の結末かもしれない。

「女王…様… 」
アリスとピーターの元に近づいてきたのは硝煙がもうもうと立ち上がっている黄金のピストルを右手に握っているローズマリーだった。絶望がアリスの体の隅々に至る力を奪っていく。ピーターはローズマリーの気配を察知していたが足のなんとも言えない激痛でいっぱいいっぱいだ。
「そのジャックはついさっき死におった。すぐ側で、エースもな…」
ローズマリーの低く冷たい声や瞳にはいやほど憎しみといった負の感情が込められていた。広い虹彩に映るアリス達の驚くさまはなんと滑稽か!助けに来てくれるどころか死んでしまったなんて。
「…なんで、二人とも…」
ピーターが彼等の死を疑うのはごもっともだ。二人は自分達を追っていたのだろうし、仮に誰かがそれを阻止しに来ても騎士隊長と王宮導師の肩書きを正式持つだけの実力がある者が簡単に敗れるはずがない。一番近くで見ていたのがピーターだった。

「わからぬ。じゃがあやつらは「最後まで」従順だったのう。」
ローズマリーが左手にとりだしたのは、ダイヤのエースとジャックのカードだった。
「妾は下克上を防ぐために、ジャックとエースどちらも死んだら対応するカードを自動消滅する呪いをかけておったのだ。」
「そんな…じゃあアルさんとセージさんは…」
どこか勝ち誇った笑みを浮かべたローズマリーは鼻で笑いながら左手に持っていたトランプを落とした。軽い紙の板は空気に踊りながら音もなく地面に落ちる。かつてひとつの命だったものがこんなにも呆気ない姿に、軽さになるとは。アリスの頭に彼等の表情が浮かぶ。こんな印刷された同じ顔ではない、確かに個性はあった。

「そのおかげで奴等にかけていた分の力を「別の力に」使うことができたからな。…お主らは随分同じ景色の中を走っておるのではないか?」
なんのことかさっぱりわからないアリスに対しピーターは既に見当がついていたらしく血の気が引いた。
「まさか…!」
ローズマリーは歪に微笑む。
「「蕀の籠」よ…貴様らは妾の手の内でずぅーっと走り回っていたのだよォ!!」
ローズマリーもしかり、ジャックと似たような力を持っていたのだ。いくら走っても出口に近付けないのはその力の仕業だった。まさしく蕀にがんじがらめに囲まれた籠に閉じ込められいたよう。そして何よりもアリスが危惧したのは、獲物の為なら部下の命を糧とする神経だ。



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