淘汰の国のアリス | ナノ

「なんか妙だな…」
と、ピーターが心の中で呟いた時だった。耳も劈く銃声がそう遠くない所から鳴った。アリスも思わず足を止めそうになった、が今はできるだけ遠くへ逃げなくてはならない。それでも彼女が立ち止まったのは連れて走っているピーターの動きが止まったからだ。

「兎さん…ッ!?」
いっこうに動こうとしない。ちがう、動けないのだ。ピーターの足からはとめどなく血が流れている。痛みのあまり声も出ないようだ。アリスは逃げることを忘れ側へ座り込んで彼の容態を確認する。

「あ…っぐ、撃たれたみたい…」
「そんな、誰が…!」
まさかこちらに向かって撃たれたものだとは、今知ってアリスは戦き慄く。彼の足を狙ったのかはたまた偶然当たったのか、いずれにしたって運が悪ければどっちかがその場で命を落としていたかもしれないのだ。いや、誰かの何処かに命中しただけで大幅な時間取りになっている。ピーターはもう、走れやしない。感情的には空しさと悔しさが鬩ぎあっている。

「アリス…足が動かな…ッ、君だけでも逃げて…!」
まだ逃げる事のできるアリスに己の限界を感じたピーターは彼女だけでも逃がそうとするも、勿論アリスがここに及んで置いていくはずがない。というかピーターをこの敷地から離れた場所へ逃がすためにアリスはわざわざ自らを不利な立場へ追い込んだのだから。
「何を言ってるの!意味がないじゃない!」
痛々しい箇所に目を背けたくもなりそうな、涙目のアリス。ピーターはそんな彼女が見るに耐えなかった。
「僕はどうせ死ぬ僕のために…ジャックがわざわざ救ってくれた命を無駄にするのか!?」
「そういうことじゃない!!」
両者もやけくそにいい放つ、アリスの方が声な力も籠っていた。
「…ジャックさんには…いろいろ感謝しているの。でも…私、どうしたら…どうしたらいいの…?」
ひそかに、こんな時にもまた助けに来てくれるのではないかと信じていた。女王を上手く宥めてくれるのではないかと。だがやはり、罪人の脱獄を手伝い挙げ句の果てにそのジャックだけを誘き寄せて倒せる奴から倒していこうと企てている自分にそのような資格はない。そこまで都合よく物事は運ばないし、利用したくない。



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