淘汰の国のアリス | ナノ


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「……急がなきゃ!見つかったら終わりよ…」
「わかってるけど…」

その頃アリスとピーターは無謀にも城から真っ直ぐ城門までそのままの大きさで広い広い庭をぽけた突っ切っていた。なんと不幸なことに途中で肝心要のキノコを落としてしまったのだ。
城から出る際にいくらかの段差が壁として二人の行く手を阻んだ。普通の体の大きさなら足元程度の段差でもたった数センチの人間からは首が覗きこめるぐらいにもなる。キノコを持っていたアリスはよじ登る時に邪魔だからといってポケットにしまった。それはまだ仕方ない。

問題はそれからだ。しばらく走っていたらアリスが自分等を探している兵士に蹴られてしまう。相手は歩いていただけで更に金属質で頑丈なブーツを履いているからか向こうからしたら少なくとも石ころを蹴った感覚にしかすぎないんだろう。しかし小人に等しいアリスはあっけなく吹っ飛んで石に身体を打ち付ける。彼女にさほど怪我はなかったものの、その時だろう、キノコを落としたのは。憐れに気づきさえしなかった。段差を無事越えて必死に駆け出しそろそろ体が伸びそうだと思ってポケットを探ったらなかった。

体は徐々に復元する中、たかが数メートルでも後を退くのは自殺行為も同じ。しかもキノコまで小さくなっては今のアリス達の肉眼では容易に見つけるのは困難をきわめる。冷静な判断も出来ない状態の頭はただ逃げることだけを考えた。


駆ける。逃げる。ひたすら走る!アリスは息も苦しそうでたまに向かい風が口に勝手に入り込んできて呼吸が難しくなる。だが絶対にピーターの手を離すことはなかった。一方でピーターは走ることに慣れており、全く息をあげていない。

「…こ、こんなに広かったっけ…」
アリスは少し絶望していた。城門が中々近づいてこないのだ。
「おかしいな。確かに、ずいぶん走ってる気がするけど。」
城からの出入りが多いピーターでさえ、変に感じていた。景色が全く変わっていない。明らかにこれは妙だ。近付いたら大きく見えるものがずっと変わらず向こうで佇んでいる。





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