淘汰の国のアリス | ナノ

彼の最後。途端に回りに無数のトランプが…否、彼の体がトランプとなり地面にばらばらと崩れ、落ちて、足元から段々と消えてゆく。これがトランプ兵の終わり、トランプはあるべき姿に戻るだけ。しかしそれは即ち、彼らにとっての「死」である。

「……やっと…らしくなれたのに…これですか…。ジョーカー…」
虫の息も同然のかすれた弱々しい声で、最後の彼はやはり笑顔…それもこんな末路を嘲笑っているような自嘲の笑みで、ふと向こうにいる仲間を見上げた。そして、自分にしか見えない姿のほうへ振り向く。

「………その、顔は…!! 」
ジャックは、ようやく視界に映した人物の姿に絶句しながら、加速をあげて地面に落ちていく。彼の身体を貫いていた大きな剣も乾いた音と砂埃を立ててトランプの山の上に倒れ、その先には何もなかったかのように向こう側の景色が見渡せた。



「…………………」

夢を見ている気分だった。これまでの出来事さえ一瞬に感じた。

「…ジャック。お前は…最後までわからない奴だったよ」
足にしがみついていた重みが消えていき、一人残されたエースは、初期の任務をふと忘れ仲間がいた場所へ歩み寄る。
「だが、なんとなく本当のお前も見れた気がしなくもない」
一歩、また一歩。たいして距離がないのに何も出来なかった悔しさも噛み締めながら、たどり着けば虚しさしか沸いてこなかった。足元には生々しい血の跡とハートのトランプがばらけていたり山になっていたり。真ん中にはハートのジャックのカードが真っ二つに裂かれていたものがあった。

「……恨むなら、私を恨んでくれ…」
そっと半分ずつ拾い上げ左手に強く握る。彼の目には最後、どう映っていたのだろうか。更に終わりの果てに一体何を目の当たりにしたのだろうか。やりきれない気持ちがただただ込み上げる。静かに呟きながら瞳を閉じて黙祷を捧げた。





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