淘汰の国のアリス | ナノ

「ほう、貴様の剣技はあれ以来見れないかと思っていたよ」
半ば皮肉を込める。対してジャックはこんな状況下の中意味深な笑みを口端に表す。
「このジャックがたかが両腕を斬られたぐらいで挫折するわけないじゃないですか。」
彼の顔にもいつしか普段見せてくれる道化のような笑顔で余裕も戻った。エースは機械のような冷えたすまし顔で袖が風で捲れて見える金属質の義手を一瞥すればエースも等身大の剣を腕を引いて構えた。相手は剣の扱いには倍に長けている、ジャックも自身の能力を駆使すればただの力攻撃を弄ぶようにかわすことができるが身体能力ではやはり物理攻撃を主体とするエースにはかなわない。いずれも同じ実力はもっている。お互いに戦ったことが過去にないので明確にはわからないが。

エースは躊躇いなく相手との間合いを瞬時に詰め空に孤を斬りながら渾身の力を込めて大剣を降り下ろした。ジャックは軽々と後ろにバックステップしたあと今度は横に向かってくる刃をジャンプでかわした。これまでは本の数秒の流れだ。体をのけ反り、なんとエースの頭上を飛んであっという間に背中をとった。身体能力はジャックもなかなか優れていたのだ。

騎士にとって、背中を奪われるのは自殺行為に等しいとすぐさま片足を軸に体をひねり回って横に振り払う。反射的に近い攻撃にさほど力はこもっておらずジャックは両手で長い柄を握りしあエースの一撃を受け止める。嫌な金属音、お互いが1つを重点に力を押し付ける。

「エース…、アリスが女王になれば…物語は終わって…しまいます…」
ジャックの方は肘が曲がって震えていた。力の差はここで出てくるみたいだ。
「この期に及んで何を…」
一方エースはまだ力の八割方しか出していなかった。声も顔も余裕綽々だ。
「完結した物語に…アリスは、もういらなくなる…もう、誰も来なくなるじゃないですか…!」
咄嗟に力を一気に出しきってエースの剣を跳ね返す。二人はその反動で後ろへ飛び退いた。

「突然何をほざき出す。」
その通りだ。所詮トランプが物語という世界でそう言われてしっくりくるはずもなく、なら何故、ジャックがそんな事を口走ったのか。





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