淘汰の国のアリス | ナノ

空は随分と晴れている。清々しいほど、風は微かに冷たさと、謎の居心地の悪い気配と共に吹いて髪を揺らす。エースは正面玄関ではなく、ゲーム会場すなわち薔薇庭園とは反対側の廊下の途中にある唯一外へ通じる扉を抜けた。
その先は丁寧にならしてある砂一面の広大な空き地があり、そこからも距離はあるが城門まではまっすぐに行けば難なくたどり着ける。実は廊下のはるか向こうに小さな小屋があり、そこにピーターを閉じ込めていたのだ。もしかしたらその周りの壁などに身をひそめわずかなチャンスをうかがっているのかもしれない。

「さて、どうしたものか…少なくともピーターからは私は見えているのか…隠れる場所もない、今更廊下に戻ったところで…」
小屋の方を睨みながら頭の中で思考する。いくら騎士隊長とはいえ自らの頭脳より力を頼りにしてきた部分もあり、ましてやこれだけ広い敷地内でめったに訪れない場所も存在するわけで、皮肉にもここがそうだったのだ。

「このまま堂々と追い詰める。向こうは焦り場所を移す…どういう真似をしたか知らんが城内には溢れん数の兵士が探し回っている。やり過ごせはしないだろう…」
自分の判断に確信を持ってからようやく足を動かした時だった。後ろからこちらへ向かって近づいてくる足音がした。

「エース!」
表情そのまま首だけ振り返ればメートルほどの距離を置いてさジャックが息を切らせてさぞ今走ってきましたかのように疲れきった様子で立っていた。エースはそんな彼を驚きの目で、ジャックは疑いの目でお互いを見あっていた。

「これは…一体どういうことですか?」
エースはすぐに冷静を取り戻し彼の問いをもう一押し探りにかかる。
「それこそ、どういう意味だ」
「儀式ですよ!儀式!!俺はそんなの知りませんよ…!?」
質問に質問で返されたジャックは焦りと苛立ちに声を荒げる。そのまさかの相手の口にした言葉にエースが細い目を丸くした。
「何をおかしなことを…」
「おかしいのはあなた達の思考回路です!!」
ジャックの感情を振り絞った声がエースの言葉を遮り更に続けた。
「アリスが彼女を引き継ぎその後は問いません。ですが、女王をおやめになり自由になった彼女はこれからどうなるんです!」
しかし対称的にエースはまるで無機質に彼に返す。
「それは女王陛下次第で私が干渉することではない。」
「……ッ、あなたは女王陛下に忠誠を誓った身分じゃあなかったんですか?」
ジャックが悔しそうに吐き捨てた。無表情を頑なに崩しもしないエースだって彼のあのような態度は見たことがなく内心まだ驚いたままだった。





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