淘汰の国のアリス | ナノ

兵士もさぞやこの場から逃げたかっただろう。ローズマリーが振り向かないままだ。
「逃げた…だと?」
「はい…!私はずっと扉の前にいまして…様子を見に行ったら…いなかったんです!逃げた形跡も、首輪もそのままで…あと、アリスがいないと…」
その時、振り向いたローズマリーの顔はそれはもう狂気の沙汰の如く血が頭の先までのぼり真っ赤で、酷いとしかいえない形相だ。
「なぜ中で見張っておらぬ!!使えん奴じゃ!エース、そいつを捕らえたら直ちにピーターとアリスを捜すのじゃ!他の者にも伝えよ!!」
「承知しました。」

あわれにも出来の悪いトランプ兵はエースに腕を拘束され、泣き言を喚きながらその場を後にした。

「脱獄しよったか…これではまさしく脱兎ではないか…!!なぜアリスまで…」
いままでの静けさが急すぎる雑踏にかき消されていく中で、ローズマリーは箪笥に立て掛けてある黄金の杖を手に取った。彼女の顔は憎しみや恨みというよりかは悔しさでいっぱいだった。

「…どいつもこいつも妾の邪魔をしよって…許さぬ……!!」
と地面に吐き捨ててヒールを鳴らした。


――――――………



「………無謀な…」
兵士を偶然近くを通っていたダイヤ兵士にあずけ、エースは大剣を鞘から抜いて片手で軽々と前方に構えたまま歩幅を小さく小走りで廊下を駆けた。幸いにも王室は一階だったので外へ出るにはさほどかからない。城の中は他の兵士に任せるとして自分は敷地外を念のために見に行く事にした。剣をわざわざ構えているのは警戒心が強い自分の癖なのかもしれない。





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