淘汰の国のアリス | ナノ

ローズマリーが生まれもって背負わされた役は「アリスに倒される」といった不条理な運命と女王の跡継ぎと共に自分にまとわりつく。だからといい、そんなものは曖昧模糊で、実際問題彼女が先手を打つなりすればいいことであり、アリスが必ずしも彼女を倒す意志で来るとは限らない。悪く言えば実に適当なものだ。だが、その役を与えられている以上大体のアリスは「シナリオどおり自分を倒しにここへくる」。ローズマリーも、もううんざりだった。内なる敵意を秘めた旅人をなぜ迎えなければならないのか。

かくゆうローズマリーだって何もしないわけにはいかない。だが、どうだろう。アリスを一人、また一人と倒していくたびにまた次のアリスがやってくる。物語は繰り返したまま。終わらせるには自らの死をもってするのみ。

そこで考えたのがこれだ。儀式に至るまではある人物にあれこれ頼んだりしたが、事は着々と進んでいた。そもそも、提案者はピーターであった。ローズマリーにとっては身近にいれど所詮他人。一番遠くにいる母親から継がれた掟は親と子を結ぶ物でもある。それだけは、絶対に破ってはいけないとずっと心に誓って今日までやってきたのだから。

今頃彼は何を思っているのか

それぐらいには気にしていたが。

「大変です!!女王陛下…」
それは突飛に、突然に。ドアを激しくノックする、向こうから誰かが!

「なんじゃ、騒々しい。エース、相手せよ」
「はっ」
不機嫌に命じられたエースはゆっくりとドアを開けた。そこには軍服を着た兵士が酷く顔色を悪くして立っていた。エースと目が合うとほぼ反射的
にびしっと敬礼をした。
「一体何の用だ。」
鋭い声で短く聞かれると背中を向けているローズマリーを一瞥してかすれ気味の声でこう言った。

「ピーター殿が逃亡しました!」
エースの表情はぴくりとも変わらなかったが、ローズマリーはその兵士の一言で怒りに狂いつつあるのが雰囲気で察してしまえた。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -