淘汰の国のアリス | ナノ



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「女王陛下。」
王室と書かれた札のかけてある部屋、ローズマリーはそこで大きなガラスのテーブルに置いてある陶器で出来た白い花瓶に一輪の真っ赤な薔薇を挿している。八分咲きだ。葉は深緑で光沢があった。 相当な広さのある、だが思うようにくつろぐ事の出来る雰囲気ではないように感じるのは自分がそういう身分故に勝手にそうさせているのか。自身が一番弁えていた。そもそも王室は私室ではない。

「準備は整いました。あとは6時を待つのみ…」
出入口である扉の前にはエースが、鞘におさめた長剣を立てるようにして両手で持って、地面に根でも張っている如く微動だにせずじっと立っている。言葉少なに告げるとローズマリーは振り向いた。

「色々あったが無事に取りかかれそうで何よりじゃ。ピーターの処刑は明後日行う。公表は明日する。」
「承知しました。…いよいよですね」
それだけ言いながらローズマリーはまたも薔薇に目を向けた。エースは彼女の背中に話しかける。
「ああ、間もなくじゃな。」
深紅の薔薇を我が子を想うような穏やかな瞳でいとおしく眺めていた。そんな彼女を誰が見たことか。近くにいる騎士でさえそんな彼女を知らない。その薔薇を見て想うのはたった一人しかいないのを後ろの人物はきっと知っているが。

「ようやく長年の野望が叶う時が来たのだ。女王という役を「アリス」という器に移し、妾はようやくこの運命から解放される。 …この城におれるのも最後じゃ。」
もの悲しげにそう言うローズマリーに「今の彼女」でいられる最期の刻が秒単位に近付いてくる。アリスをわざと生かしておいたのは生身の体が必用なのと、あのゲームの真の意味は「女王」を継ぐにあたって相応しい人物か試す為であったのだ。







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