「……………」
光もろくに届かないような、隙間もなくびっしりと敷き詰められた石煉瓦の壁。床も地面と同じく、埃をかぶって凹凸していた。いずれにせよ、冷たい。壁も床も、そこを漂う風と空気もひんやりしている。寒いというには少し違い肌にぴったり張り付くような、そんなきっと雰囲気的な何かだ。
「………………」
独房でピーターは一人、膝を抱えて顔を俯いたまま座っている。手からあの黒い手錠は外されていたものの、首には革の首輪が壁と鎖でしっかり繋がれていた。
暗い部屋、中はそこまで広くない。檻などはなく、出口もない。穴はあった。しかし、それもわずか数センチの穴など一体どうやって抜けたものだろうか。それより、もう既にピーターはここに閉じ込められた時には抗う気力さえなくなっていた。そこまでするつもりが無かったなどは通用しない。なぜならするつもりが有ろうが無かろうがしてしまったものは仕方ない。事に及ぶまでの事情なんか知ったこっちゃないのだ。
それと少なからず自分のせいでもある。いくら仕事が出来るからといってまた別の話だ。ローズマリーは仕事のできぐあいに応じての報酬は払うが贔屓はしない(ジャックやエースは代わりが見つからないため多目に見ている)。自分が告知すれば処刑…及び処分は下しただろう。別に隠すことも無かった。
そうだ。
甘く見ていたんだ、きっと。
自分ならこれぐらい耐えられると思い込んでいた。
結局、自業自得…いや、自縄自縛ではなかろうか。自分の縄(過信)で自分を縛っていたのではないのか?数分間ぐらいそんなことを考えながら足元をじっと見ていた。
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