淘汰の国のアリス | ナノ

閉まった扉の向こうからはまだ四番の抵抗の声がする。もはや黙るしかなかくなった。沈黙は金、雄弁は銀ということわざをアリスも知っていたが残念!可哀想にここでは沈黙は金にもならずそれ以外は全て死なのだから!被告人ではないのに実刑が下されるとはまさしく理不尽を極めている。…それにしても先程の四番にはいささか違和感を覚えてはいた。なんだか取りつかれていたような…。

「…邪魔者は失せた。さて…」
咳払いをして気を鎮めたローズマリーが、無機質を見るような瞳で、事の発端者(ピーター)を静かに見据えた。
「汝に問う。ハートの兵士、二番、五番、七番 を殺害したのは…誰じゃ」
「残酷な聞き方!」
アリスが心の中で呟いた。あえて自分を名乗らせるのがそう思わせた所以だ(この時すでに五割ぐらいはピーターが犯人だと考えていた)。

「………」
やっとピーターが顔を上げた。なんとやつれたような表情。部屋で見たときとは別人だ。その動向に、光はない。アリスは思わず彼の名前を呼びそうになったがぐっとこらえた。

「……僕…です…」
これほどにない生気のない声で答え、視線を下に落とす。己の罪を肯定した、瞬間に集まる意味ありげな大量の視線とどれにもあいたくなかったのかもしれない。
「なぜ殺害するに至った。」
ジャックとエースはどちらを見ることもなく机に目を向けていた。ピーターはすっかり諦めているみたいだがこの場にアリスもいるのを意識はしているのかは疑問だ。

だが私情は無視が公平。

トランプが仕切る裁判に情状酌量(おなさけ)は無し。

其れがこの場所の掟なのはトランプ外のピーターも重々承知で、情けなくも重い口を開く。







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