淘汰の国のアリス | ナノ

入ったらそこはもう空気が違っていた。言うなれば、息が詰まりそうな重々しが充満している。さっきまでの喧騒が果たしてなんだったのかと言いたいぐらいだ。雛壇がぐるりと空間内を囲んでおり、更に1段2段3段…首が疲れるぐらい見上げた先にまで幾重にもあった。シャンデリアがこれまた大きいぶん眩しい光を放っていたので視線をやや下げる。

アリス達は適当に空席を見つけて席についた。奇跡的にも一番下の一番前に座れた。まだまだ入り口からはは人が絶え間なく入ってくる。多少の人口密度ども影響してか空間内がいい温度になっている。
「めんどくせー…」
後ろからぼそっとあくび混じりな声が聞こえて、レイチェルにもあくびが移る。他にも四方八方からひそひそとした声がする。

「…あら?」
真ん中のスペースには、まず左右に階段が取り付けられた一際大きな席にローズマリー、両側の階段付近には紙を持った兵士とその少し前に槍を手に持ち鎧に身をかためた兵士がいた。裁判所には不似合いだが念には念を押しているのだろう。アリスのいた世界とでは事情が違う。

その席を挟むように長いテーブルがある。それぞれにエースとジャック、セージとアルカネットが座っていた。特にセージはどこか浮かない顔をしている。若干気分が悪そうだ。

そしてアリスは一番気になっていた被告席に目を移した。被告席には椅子はなく、教壇の前にあるような小さな机だけだった。そんなことは、どうでもいい。そこに、立っていた人物は彼だとアリス達の中で誰が想像したというのか!

「兎…さん!?」
「ピーターの野郎じゃねえか!」
「静粛にお願いします!」
アリスとレイチェルが信じられない光景を目の当たりに思わず声をあげた。すぐさまローズマリーの側にいる兵士の一人が叱責する。

「!?」
被告席に立つ小さな人影が一瞬声のした方を振り返る。やはりだ、そこにいたのは紛れもなく白兎であるピーターの姿だった。何故かタオルケットに体を包んでいた。ピーターはすぐにまた真正面を向く。

「ようやくアリスらが来たようじゃ。…しかしてまだジャックからの証言を聞いておらぬ。」
ローズマリーが怒ることもなく淡々と言う。アリスも一旦はなんとか冷静を保とうとした。
「エース様はアリバイというか、女王陛下といるのを目撃した奴が多くてさ」
隣にいたハートの六番がまだ聞いてもいないのに親切に小声で教えてくれた。
「一応証言はしたし嘘じゃないってわかったから…」
「首をはねられてもよいのか?」
目すら向けずに冷たく言い放つ。六番も黙り、アリスは丁寧にしてくれたお礼もとっさに言えなかった。






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