淘汰の国のアリス | ナノ

「とりあえず1番になれば何かがあるかも…!でもいつ終わるかわからないのよね…」
リズムよく呼吸をしながら大股で走り次々と抜かしていく。だが走ることが得意な動物にはやはり敵わない。チーターだろうか、余裕で一周も差をつけられている。
たまに視界に移る司会は長見の見物のようにニコニコ眺めている。ポケットに手を突っ込んだまま。

コースはアリスが運動会で走っていた距離より短くおよそ100メートルぐらいだ。しかしそれを今で5回も走っている。これじゃあ持久走どころかもっと走れば長距離だ。
いくらかけっこが得意とはいえそれとこれとはまた別である。14歳の少女でそんなスピードがずっと続くわけがない。

「あいてっ!」
するとすぐ後ろでそんな声をしたのでスピードを落として振り返ると転んで俯せに倒れている人がいた。少し迷ったが、アリスは転んだ人の方へ近寄りしゃがみ込めばそっと手を差し延べた。転んだ男性はきょとんとしている。まさかレース中に手をかされるとは思ってもみなかったことだからだ。

「…あ、あっしは大丈夫で…」
「なにが大丈夫よ!こんなところでへたばっちゃ迷惑だし消毒しなくちゃいけないでしょうが!」
と言うと手を掴んで身体を起こしてあげた。その時だった。



「レース終了ー!!!!!」



という声が全体に響く。


「………なんですって!?」
レースの終了を告げた司会…マーシュの方を見上げた。
「いやだって、皆走ってないもん。」
そう返されたから周りを見回すと、息を切らして膝を曲げたり座り込んでいる人や「お疲れさん」とお互い声を掛け合っている人が所々にいた。確かに走るのをやめたみたいだが果たしていつのまにやめたのかと問い掛けた。

「その人が転んでアリスが起こしてあげたらみんなやめちゃったよ。」

起こしてもらった男性はアリスの背中に隠れた。



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