淘汰の国のアリス | ナノ

「おっ?」
モップを肩に担ぎ左手には水が並々と入っていたバケツを提げているセージが空き部屋から出てきた。

「あれは…ピーター御前ではありませんか!」
セージは朝早くからうってつけの獲物を見つけ、嬉しそうな笑顔で遥か前方に見える小柄な人影を指差した。本来、直接の上司のジャック達よりも更に上に属する身分のピーターはセージにとっていい玩具だったのだ。つまり、上下関係がはっきりしているのは女王陛下と部下の間のみらしい。

「う〜ん、でもなんか用事っぽいなあ…」
ピーターの前には数人の兵士がいる。やる気のない兵士を監視しているのか、セージは深く感心して頷いた。しかし、せっかく後ろから驚かそうとしていたのが台無しになったのはおもしろくないようだ。
「…あり?みんな地下牢に向かってる?」
自然にドアに顔だけ覗いていた。バケツも床に置いている。
「あいつらは処刑リストには入ってないだろ?入ってたなら昨日のうちに…これは一体…痛い!?」
突然、後ろから誰かな頭を小突かれる。慌てて振り向いたらそこには呆れた顔のアルカネットが立っていた。
「全く…人のことを気にするあたり女子だよな。」
「カスタネット!!いだい!!」
新しいあだ名を口にした瞬間またもや頭を小突かれた。さすがに同じ箇所を二度も攻撃を喰らったものだから頭をおさえて涙目になって睨んだ。
「ストーカーみたいだからやめとこ」
他人には全く興味がないアルカネットにとってセージの行動がいかに滑稽に見えたか。仕事に戻そうと肩を軽く寄せたが断固としてセージは動かなかった。
「ストーカーとか!尾行だよ!」
「駄目じゃん!」
間髪入れずかえってきた。
「あ…見失っちゃうよ!行かなきゃ」
もはやモップさえその場に置いて足音を出来るだけ消しながら後を追いかけた。
「おい!…知らないからな、どうなっても」
渋々セージに続いていった。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -