淘汰の国のアリス | ナノ

「アリスはさ、「幸せの青い鳥」って知ってる?」
あまりの唐突な話の変わりようにすぐに思考が追いつかないまま考えを巡らせていた。
「………確か、そんな絵本見たことはあるわ。残念ながら読んだことはないけど兄妹がその青い鳥を追いかける…」
「そうそう。…まあ、名前だけ知ってればいいや。」
なんとなく申し訳なく思った。絵本の類いなら好きで結構読み漁っているのだが、たまたまそれに手をつけてはいなかったのだ。もしあらすじ程度でも知っていば話は盛り上がるかもしれないのに。

「幸せの青い鳥を追いかける…はたして幸せになったのかな。それはまた読んでか…ふぁ〜…うーん…」
そこで大きなあくびが入る。アリスにも移りそうだがなんとか我慢した。

「でもさ、白い兎を追いかけた君は…どうなるのかな。不思議の国のアリスでもないなら誰にもわからないよね」
「誰だって、未来のことなんかわからないわよ」
アリスの声色には意志の強さが感じられた。
「青い鳥を追いかけた兄妹も、幸せになれるって決めつけてるだけで決まってはないじゃない。」
自分の考えを押し付けはしないものの、間違ってはいないと心ではそう思っていた。少しの間お互い無言で数秒の時が経ち、ピーターがそれは(アリスからすれば)弱々しい声で呟いた。

「決められた未来もあるんだよ。僕らは役、君達は…寿命で…」
「未来は過去と違って変えられるんだから」
思わず相手が喋っているのを遮ってしまった。だがお構い無く続ける。
「決められた未来までの間に、行動を…」
「ダメなんだ」
彼の発した言葉を台詞に入れつつ自己の意見を述べ始めた最中に今度はピーターに中断させられる。
「ダメなんだよ。僕らは、ここに来た時からこの先もずっと同じ未来を歩むのさ。…君達とは、違うんだ。」
すぐさま反論は出来たはずだがあえてアリスは口を瞑る。ここで言い争いするのも、無駄に疲れる原因になるだけだ。世界さえ違えば分かち合えないこともある、とも承知していからでもあるが。

「…そう。」
とだけ言うと、相手にばれないよう声を殺してあくびをした。幸い気づいていない。
「…アリスは…その…青色がよく似合うよね」
「初めて言われた」
今着ているのは淡い桃色のうさ耳パジャマなのだが、「これは誰の趣味だろう」とさりげない疑問から関係ない余談事を深く考え込んでしまうおそれがあるのでたいして触れなかった。




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