淘汰の国のアリス | ナノ

「…それで?」
「それでって言われても…」
意外と意地悪なものだ。それでどうしてほしいなどちっとも頭になかったアリスは大変返事に困った。いや、一つは考えつく。が、自分から言うのも気が引ける。とはいってもこれは自業自得で仕方のないことなのだ。ぎゅっと目を閉じて投げやりのように言った。
「わわ、私にっ…お、罰をお与え下さいぃ…うぅ…」

段々声が萎んでゆく。心では「何を言ってるんだろう」と自分が惨めに思えてきた。悪いことをした人が自ら罰を求めるなんて滑稽なこと。叱る立場からしてみては都合がいい…どころか明らかに変な人と思うだろう。まあ、喜んで受けているわけではないのだがそれをあえて言わせるのが罰だったとしたら相当やられたもんだ。

「アリス…」
ピーターが顔を出す。こっちの方が「何を言ってるんだろう」という表情をしている。
「…………ッ!」
「……あははは、ごめんごめん。つい意地悪しちゃった」
覚悟半ばに決めていた矢先、なぜか相手は、おもしろ可笑しく笑っていた。そしてやはり意地悪だったらしい。アリスはまだ裏に何か考えているかもしれないと警戒を解こうとはしない。

「正直に謝ってくるとはね、本来はそれで正しいんだけど。別にそこまで気にすることじゃないよ。アリスならいいんだ。」
当の破壊者は唖然とした。
「おかしな話!この国ではアリスっていうのは色んなところから優遇されたあげく家を壊しても許されるわけ!?」
「許されるっていうかー…」
アリスは元いた世界でこれといって優遇されたことはないが、アリスじゃなくても誰にせよ他人の家をまるまる破壊して許されるなど聞いたこともない。ピーターは苦笑いで返す。
「君は「不思議の国のアリス」をしっかり読んでないだろう。それを読めば大体わかるから。」
「…え?うん…帰ったら読んでみる」
実際には流し読みにしか見ていない。この国の基礎(ベース)となった物語だから直結的なヒントが見つかるのを言いたいんだろう。帰ったら直後のプランが出来た。

「住むところは最悪どうにかするさ。…でも、アリス…君がそこまで申し訳なく思ってるんなら一つお願いを聞いてくれないかな?」
一気に後悔した。相手はさほど咎めるつもりがなかったのに自ら罰を受けると言ったからだ。あの場合は、それしか思い浮かばなかったのもあるが…。哀れなアリス。すっかり落ち込んで「何かしら?」としょぼくれた声で訊ねた。

すると、口より先にピーターが耳まで中に潜ってアリスの背中に腕を回す。
「うわあっ!?兎さん、ちょっと何を!?」
あまりの突飛な行動に軽くパニックを起こし手は彼を引き剥がそうとして足は逆に絡んでいったり、自分でも何をしているかさえわからない状態だった。一方のピーターは(なぜ足が絡んだのかはさっぱりだが)暴れるアリスもお構い無しで華奢な胴にしがみつくようにして離さない。





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