淘汰の国のアリス | ナノ

「君は丁寧に手当てをしてくれた。おかげですぐに動けるようになった。…君みたいな少女はまさしく僕らの望んだアリスだった。………でも、残念だよ。」
ピーターが深いため息をつく。少しの間ためてから続ける声は本当に心らな何かを悔やんでいた。

「物事には順序がる。僕の勝手な判断で順序を乱すわけにはいかない。…逸材を見つけたとしても、関係ない。」
アリスも彼の話に聞き入ってて言いたいことも口に出せなかった。

「僕は信じた。またいつか君に再び出逢える事を。そしたら絶対、君をアリスとしてこの国に招待するんだって。君なら、この物語にピリオドを打ってくれるって、ずっと信じてた。」
今になってアリスは真の意味がわかった。ローズマリーが出会い頭に言っていたことも。この7年間、アリスはまさか過去に偶然出会ったのがおとぎ話からやってきた使者で、素質がある物語の主人公候補というレッテルを貼られていたのには驚き以上の何物でもない。
「だとしても…なんで私…!」
「君は家に運んだよね?」
ピーターは彼女が何を言おうとしたか考えていたようだ。アリスも頷く。手当てしたいにも最低限必要なものもなく、生憎どしゃ降りだったので場所を家に移したのだ。

「僕は運命をこれほど感じた日はないよ。なんせ、あの時見た場所と全く一緒だったんだから。…君もまだ、面影があった。」
確かに、家なんてそうそう姿を買えるものではない。精々、周りの草木が季節に応じた姿に変わるだけで建物の方は雨漏りの処置を施したぐらいでぱっと見一緒なままである。

「君には借りがあるから、直接は何もしてやれないけどちょっとは楽しい思い出になればいいなって。…でも、これじゃあ散々だね。ごめんとしか言えない。いつもそうさ…」
ベッドにくるまり耳だけが飛び出た状態になった。気のせいか、すごく消え入りそうにも聞こえた。

「兎さん!…あの。ごめんを言うのは私の方なの!」
しかしピーターの返事はなく、かわりに耳が軽く動く程度だ。
「今話すことじゃないけど…今じゃなかったら一生謝れない気がして…」
自然に体が小さく震える。歯をくいしばってみるも止まらない。静かな部屋で距離も近ければ布とにあたる音でもわかるはずだがピーターはッドの中にうずくまったまま顔を出してくれない。構わずアリスは言った。

「実はあなたの家を壊したの私なの!!
「……?」
しばらく続くわずかな沈黙さえアリスには耐えられないほどの苦痛だった。



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