淘汰の国のアリス | ナノ

それが例え職業柄だとしても、続けるうちにやがて元の自分が作り上げた自分に塗りつぶされるのではないだろうか。アリスはなんとなくそんなことを憂いていたが、ピーターは彼女の考えている事はお見通しのようだった。
「あくまで他人と接触する場合だけさ。プライベートで堅くなる必要はあるかい?」
それを聞いてアリスも心底ほっとする。
「…つまり、使い分けてるってこと?」
「そう。アリスだって、人によって態度は違うでしょ?」
そう言われたのでまたも元にいた世界での事を思い出す。家族や同級生、先生、見知らぬ他人、苦手な人…大まかにわけてみて比べたらやはりそれぞれへ接する態度は違うものであり、今のピーターはどれかと言われれば知り合い程度だった(友人とさえ一緒に寝た事はなかったので正直説明しづらかったが)。

「…言われてみればそうね。じゃあ私にとって兎さんは何かしら。」
「そんなの僕にはわからないな。」
アリスは黙る。聞き方を間違えてしまったのだ。
「ま、この国に導いた白兎…てことでいいんじゃない?事実そうだし。」
と適当にあしらうピーターに納得がいかなかった。態度、というより答えが。
「そういうのじゃなくてー…その色々あるでしょう。友達とか、他人とか」
「他人だね。」
さも当たり前のように返されむっときたアリスは眉尻を上げて睨んだ。
「他人の私と一緒に寝るの?あなたは。」
「えっ、でも…」
その表情の変わりように少し焦りながら枕に顔を埋めてピーターは言った。
「流れでそうなったんだし…一緒に寝るのに他人とか関係ある?」
結構口ごもった声だが平然としていた。ただ目を合わせたくなかったらしい。アリスも案外早く納得した(感情表現が過大なだけなのだ)みたいで
顔も普通に戻った。
「兎さんの仰る通りね。じゃあ兎さんは私のことどう思っているの?」
「僕が!!?」
顔だけこちらに向けた時のピーターはそれはもう一番のリアクションというか不意打ちを喰らったようで急に目が泳いだりと挙動不審になりだした。一体なんの図星を突いたのだろう。

「あ、う〜ん…そうだよね。うん、君はだね、僕にとったらアリスかな。アリス(仮)だけど。」
最後はやたらきっぱりと言い切る。だが焦りはおさまらない。アリスも、妙に納得してしまったもので反論はしない。(仮)とはなんと秀逸なことか。
「そうよね。その通りだわ。…あなた達にとって私も他のアリス達と同じものなのかー…」
「!?」
アリスは別に深い事は考えてない。さりげなく呟いたに過ぎない。しかし今度は言い方を間違えたのか、かなり意味深に捉えたピーターの長い耳がまっすぐに立って丸い目はさらに丸く、困惑の色を浮かべた顔でこちらをみている。分かりやすいにも程がある。こんなのでは嘘をついたってすぐにばれてしまいそうとアリスの頭の中は余計な心配事をしていた。



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