淘汰の国のアリス | ナノ

「……ん、うぅ〜ん…」
唐突にアリスを襲うのは眠気。背中を包み込むのはふかふかのベッド。さっきはどうやら枕に肘をぶつけたらしい。ゆっくり瞳を開けると、シャンデリアがこじんまりしたオレンジ色の光りで照らしていた。部屋自体は薄暗いのに暖色系の光りというだけでこんなにも安らぐものだ。

「……夢?」
時間をかけて身体を起こす。辺りはさながら高級ホテルのような、広い部屋だ。アリスにとっては現実味がわかない空間も、夢の世界に比べたら現実的ではある。
「…いつの間にか寝ちゃってたみたい!」
なんとか記憶を辿ってみる。まずアリスはアルカネットとセージに連れられてこの部屋に着いて、あまりの高級感と清潔感溢れる空間にしばし酔いしれる。きちんとお風呂もついており、綺麗に掃除してあって、そこで体を洗い流し優雅にお湯にバラの花びら(専用の物である)を散らして至福の一時を堪能した後、丁寧にアリスが最初着ていた服が洗って置いてあり、更に可愛らしいパジャマまで用意され、あまりのベッドの気持ちよさについ…。

結構好き勝手にくつろいでいたようだ。いや、さぞかし疲れていたんだと自らに言い聞かせて部屋での行動を無理矢理正当化させた。

「さっき見た夢は何だったのかしら。満喫しすぎた私への罰かな?…どうせ夢は夢だから忘れちゃおう」
うさみみフードのついた淡いピンクの可愛らしいパジャマに身を包んだアリスがふと目に入った光景に違和感を覚えた。

「枕が2つあるわね。」
ベッドが一人には十分なぐらい大きいのにはさほど突っ込まなかったが、これに枕がプラスされるともしかしたら二人用なのだと思ってしまう。まさかとアリスは首を横に振るが、実は今あらためて思い出してみればおかしな点は沢山あった。

まず、洗面台には使い捨ての歯ブラシ等の横に誰かが使っていたであろう歯ブラシが立て掛けてあったのと、自分の着替えの横にもう一人分の着替えが置いてあったこと。あのときはすっかり浮かれていて注視しなかったが考えてみると明らかに変だ。

もしやここは死んだ兵士が使っていたのではなかろうか。

すると、お風呂場から何か物音が聞こえてきた。



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