淘汰の国のアリス | ナノ


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「こんなものか。」
シフォンは部屋の片隅のソファーに座り、1枚の紙を凝視していた。左手には羽ペンと、1つのカードが握られている。

「今はまだ無理だな。…明日になれば、もう大分落ち着いているだろう。」
ちなみにレイチェルとフランネルは自分に用意された部屋を視察しにいっているところだ。

個人的にアリスには聞きたい事がいくつかあったのだが、すぐにはさすがに無粋である。ひとまずそっとしておきか彼女の気分が落ち着いてからにしようと考えていた。なんにしても今宵開かれるらしい晩餐会で顔を合わせるのだからそれまでゆっくりしよう。

「やはり声に出してみるのが一番かな?幸い誰もいないし…」
耳をすませ集中し、五感を敏感にさせてみるが音はしない。シフォンは紙に滑らかな字で書かれた文字を低い声で読み上げた。


――――――――…

ナターシャ=ベルガモット様

僕のような余所者が書くことなどしれていますが、それでも貴女に伝えたい事があります。

貴女はこの国の事をずいぶんとお気に召されていたみたいでとても嬉しい所存です。なぜ、僕がこのような事を書くのかも貴女はきっと覚えていらっしゃらないでしょう。別にいいんです。貴女が幸せであれば僕も幸せですから。

死して尚、貴女に尋ねたい事があります。

貴女はこの国で幸せでしたか?

どうせ僕はあの世でも貴女と巡り会う事は出来ないでしょうから。


貴女に幸せになってほしい為に、この国が、この物語が出来たようなものですから。…このような形で最期を迎えるとは大変、残念です。

せめて、この国の行く末を天国から見守っていて下さい。


天国では幸せにね、姉さん。


シフォン=ベルガモットより


―――――――――…

「ほんと、手紙を書くのは苦手だよなー…」
シフォンは一通り読み上げた後、羽ペンとカードを傍らに置いてしばらくうなだれた。





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