淘汰の国のアリス | ナノ

「このお嬢ちゃんにやってもらえばいいじゃないか!なあ野郎共!!」
広場からは「そうだそうだ!それがいい!」、「賛成だ!」などと歓声を交えながら聞こえてきた。あまりの突然のことにアリスは目をぱちくりさせている。
「え、えと…私…ルールわからない…」
「司会は簡単!スタートて言って適当にゴールて言えばいいだけさ!」
周りはすでにぞろぞろとそれぞれのスタート地点に集まっていた。まだ混乱したままだというのに!

「そうと決まりゃあワシも…」
「待って!!!!!」

ざわめきが止み皆がびっくりしたように大声のした方を振り向いた。アリスの方ではなく、マーシュの方を。

「な、なんだぁ?」
「せっかく来たんだから参加させてあげようよ。初めての人にはいろいろと酷じゃない?」
当のマーシュはへらへらと笑いアリスの背中を押す。

「アリスも楽しみにしてたんだよな?」
「え…ええ、まあ…。」
「じゃあ司会はどうすんだよ!皆動き出したっつーのにまた話がふりだしに戻っちまうだろ!」
男性の言うことはもっともだ。ようやく一つにまとまり始めたというのに二度も引き延ばされてはさすがに楽しみにしてた人も飽きてくるはず。それとも、何か考えがある上でこんなことを言ったのだろうか。


「司会なら…………うーん……俺がやる!俺がやるから!」

周りがまた少し騒がしくなる。中には「いいのか?」、「期待しよう」などと言ってる人もいる。

「お前はそれでいいのか?」
「何回も参加したことあるし、んーまあ一回ぐらいはやってみてもいいかなーって」
相変わらず呑気そうな笑顔だ。だがなぜか表情の暗い人もいる。

「ちゃんと用意してるから!」

アリスにはその言葉の意味もわからなかったが、それを聞いて男性含み全員が安心の表情を浮かべた。

「なら問題ねえ!!よし!レースを始めるぞ!」
「待ってましたあああああ!」
「始まるぞおおおおお!」
とむさ苦しい男の大歓声が森に響いた。

「あの、ネズミさん…」
「ん?」

「そのぉ……さっきはありがとう!」
と満面の笑顔で礼を言ってアリスも群れの中に入っていった。




デニムのポケットに手を突っ込んで後ろから追うように歩いているマーシュの顔はやや強張った表情をしていた。






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