淘汰の国のアリス | ナノ

「ま、それは冗談として。ボクが女の子みたいに見えるのはある意味仕方ないことなんだよねー。だってボク、元々は女の子だもん!」
アリスは彼が何を言ってるか理解が出来なかった。
「…どういうこと?」
ついついたずねてしまうのは癖だ。アルカネットはアリスの空いた隣に並んで歩き苦渋の表情を浮かべながら注意をする。

「アリスとはいえ他人に身の上を打ち明けるのか?」
その瞬間にアリスが「しまった」と口をつぐむがセージはさして気にしていないようだ。
「どーせ有名な話だし、今更隠すようなもんじゃないっしょ」
渋々アルカネットも黙った。自分をありのままさらけ出そうとするオープンな性格は上司にあたるジャックとは似ても似つかない。それはそれでどうかとおもうが。

「まあちょっと過去に遡るんだけど…昔々、淘汰の国の所有権を巡って4つの主力が血を血で洗う争いました。」
突然、演技がかった語り口調になった。アリスは真剣に話を聞いている。
「当時淘汰の国を治めていたのはハートの軍で、雑魚は根絶やしにしろと女王陛下とあっという間にスペード軍を殲滅しました。」
4つの主力とはトランプの4つのマークだと最初のうちにわかっていたが、なぜわざわざ宣戦布告をするのだろうとアリスは子供のように純粋な疑問を抱いた。そこで口にしないのが彼女がただの子供ではないのを表していたが。

「クローバー軍は白旗をあげて降参しましたが、不穏因子は取り除けと奇襲をかけて一夜のうちに片付けました。」
淘汰の国、不思議の国でもなければ童話でもない世界はしょせん、血生臭い歴史で成り立っているのだとしみじみ思う。
「そして我らダイヤ軍はなんせ平和主義でして、いずれはこっちにも向かってくると考えて王様は交渉に出たんです。」
「我らと力を合わせて淘汰の国を共に支えようと。なんだって力になると。我らはプライドより平和を選ぶ。と王様は仰せられた」
途中で口を挟んだアルカネットは少し悔しそうにも見えた。

「しかし、話し合いで通る相手ではなく女王は「誰が裏切るかわからん!皆殺しだ」と言って、そこからはもう戦争のようでした。」
淡々と語るセージにもさすがに笑顔はない。アリスはひどいと心の中で呟きながらも、今まで容赦なく他の軍を倒してきた方としてはそう言う気持ちは少ないわからなくはない。

「平和主義ですが、我らの軍は平和を守るために十分に力をつけており、4つの軍の中では有力候補だったのでした。…女王はまだ今の立場に就いて長くないのにおそろしいカリスマ性の持ち主で、軍の戦闘力も凄まじいもので苦戦を強いられました。」
ふとエースとジャックの二人を思い出した。エースは例のゲームで僅かに垣間見たが躊躇いもなくまるで薪を割るように冷静に、冷酷に命ある者に剣を振る様子が恐怖感としてしばらく根付いたのと、ジャックは本当に道化というか、実際にアリスに渡したテレポートカードだけでも戦闘においては強力な術になりそうな代物を持っていたことから魔術師のような印象も受ける。影から支配するような、神出鬼没なのも侮れない。ローズマリーに至っては自ら行動するのだ。守られているだけではない女王がいるだけでも心強いのに、傍にいる者はもはやトランプのような薄っぺらい紙に例えるのはとても申し訳ないぐらいだ。





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