淘汰の国のアリス | ナノ

自由奔放な上司をもった憐れな部下はしばらくその後ろ姿を呆然と見届けた。

「…セージには本当、心から同情するよ。」
本当に心から同情しているか微妙な平淡な口調と真顔で帽子の上から頭を撫でてやる。セージは低い声で
「同情するならボクに付き合え」
と呟いた。
「マジか…」
アルはやたら嫌そうに返すが、同情はしていたのだろう。「わかったよ」と渋々セージの頼みを承った。とたんにセージは「やったー!」と両手をあげて万歳をした。

「えっと…」
二人の部下の押し掛けから始まってしばらく除け者にされた挙げ句、あたかも自分が仕事において面倒な存在であるみたいな扱い(思い込みかもしれないが)で話は進んだのでアリスはいい気分がしなかったのだ。控えぎみに声をかけてみる。「アリス」とは名ばかりでしょせんよそ者はよそ者なのだ。自惚れてはいないとしても少々こたえるものかがある。

「でもまーいっか!」
か細い声にも気がついたセージが勢いつけて振り向く。予想に反してすごく嬉しそうだ。
「なかなかアリスと話せることないし!ねー、アル!」
「…話すことなんてないけどな」
アルは適当に返すが嫌そうな雰囲気はない。素っ気ないのもエースに似ている(実はアリスにそれほど興味がないだけだった)。
「さーさ、たわいのないガールズトークでもしながらお部屋に向かいましょ!」
「……男だろ。」
アルが何やらぼそぼそと呟いていたが誰の耳にも聞こえず、セージが「レッツゴー!」と片手拳をあげ意気揚々と先手を切ってはアリスもほっとして後をついていった。



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