淘汰の国のアリス | ナノ

にしても部下は上司に似るものだと二人を見て感じる。1つの気になったのはセージが自らをボクと呼んでいる点だ。名前といいますます中性的な印象になってゆく。

「…そーだ!セージは今から何処へなんの仕事をするのです!?」
ジャックが何か思い付いたのか満面の笑みで大股で一歩にしてぐんと顔を近付ける。アリスなら後ろに下がってしまいそうだがセージはびくともしない。


「今からは晩餐会の準備を…」
「ほーお、ならその仕事。俺と交代しませんか?」
「………はあ?」
今度はしかめっ面で聞き返す。ジャックと違うのはコロコロと表情が変化するところ。初めて出会ってから短い時間で喜怒哀楽を見ている気もする。
「大丈夫です。ジャックさんならあなたの給料を倍に倍にするぐらい完璧に仕事をこなしてみせます!」
自信に満ち溢れた上司。どこか腑に落ちないのはセージだけではないはず。それでも代わりに自分の仕事を受け持ってくれるので考える気にはなった。問題は今から押し付けられる仕事がどういった内容なのか、だ。
「…ボクは何をすればいいのですか?」
「アリスを今から言う部屋に案内してほしいのです」
そう言うと姿勢を低くして耳打ちをする。しばらくしたらセージが信じられないとばかりのわかりやすい表情を浮かべる。
「本当にですかあ!?し、知りませんよボク!」
ひどく狼狽える部下に対し上司はその反応を楽しんでいるようにも見える。今からその部屋に案内されるアリスも気が気でいられなかった。

「何かあった時は俺がなんとかしますから!極力秘密でお願いします。では☆」
そう告げてジャックは背を向け口笛を吹きながら行ってしまった。仕事、アリスから見れば違う何かかも解き放たれずいぶん身軽そうに見えた。…というか、森の時も確か途中でアリスを放置した。なんだろう。ひょっとして自分はお荷物なのか。それともただのサボり癖か。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -