淘汰の国のアリス | ナノ

だけどこれがまた困ったことに、はっきりとした理由が見つからないのだ。自分は一体周囲に対してどのような感情をもって接してきたのだろう。とりあえず、一番付き合う時間が多く身近な存在を頭に浮かべる。しかし、どうも全部が中途半端だ。少なくとも、マイナスなイメージを抱いているような人物も特にいない。つまり、それは。
「…どうなんでしょう。正直なところ、自分で自分がわかりません。」
困ったように微笑み返す。嘘をついているともし突かれてしまえばもうすっぽらかして逃げようとも考えていた。自分でもよくわかっていないのだ。問い詰められても困る。
「…やっぱり、あなた。猫さんと似てる。」
アリスの顔にようやく穏やかな笑みが戻る。この流れでもう解放されただろうと安堵したと同時に「この場でなぜその名前が…」や「どこが自分と似ているんだ…」といくつかの疑問が沸いてきた。

「でも、自分が他人を好きなのに「好かれるのは面倒」ってはねかえすのって…そんなのずるいと思う。エゴだわ。」
一瞬アリスが何を言い出すかと思えば森の中で自分が発した言葉ではないか。よく覚えていたものだとアリスにまさか2度も感心した。更に、エゴとまで言われる始末だ。おおよそそれなりに聞こえる単語を知りもしないでしゃべってるだけには思えない。
身も蓋もなく、ジャックは本当に困っているようだ。
「私もあなたを好きでいさせてほしいの」
「…それは、 まあ。」
ご自由にどうぞと言いたいところだったがここでは抑えておかないとろくなことにならない。いわゆる空気を読んだのだった。それより好きでいさせてほしいとは、あざとい。男がすぐに考えそうなあちらの意味はないとは思うがこの場面に直撃した人はまず勘違いしかねない。当のアリスもそんな様子は全くなく、深追いもしなかった。だが引き下がったわけではない。
「ジャックさんは私のことどう思う?」
「…それは……」
もしも仮に好きだと返したらどんな反応をするのか、仕返しにからかってやっても面白いた考えていた。少女らしく顔を赤くする様子もない、答えを待ってるものの大真面目だ。予想以上のリアクションを期待していたが…

「あー!先輩みっけー!!」
突然アリスの後ろの方から元気のいい声がした。アリスが振り向くと声の主がこっちに向かってぶんぶん手を大げさに振っている。傍らにはもう一人いた。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -