淘汰の国のアリス | ナノ

「ジャックさんって、へんてこりんな仮面を外したらいかにもこれがありのままの自分ですよみたいな雰囲気を出してたけど…その笑顔自体が「仮面」なんじゃないかって思ったの。」
なんということだ。それしかとても言えなかった。ジャックが普段手にもったりつけている仮面の役割や、結局は仮面の裏の裏を探り当てられてしまったのだ。完璧な笑顔は完璧すぎて違和感を覚えさせたに過ぎない。

「どうせならその仮面も外してほしかったから…適当なこと言っちゃった!」
ジャックは神経を削がれるような感覚にまで襲われたというのにアリスにとっては「適当なことだだった」のだから。いや、果たして適当なことだったのだろうか?彼女の疑念と本心をただやみくもにぶつけただけなんじゃないか?

考えれば考えるほど、アリスがわからなくなってた。彼女は一体…

「何者なんでしょう…」
「…なんて言った?」
「…いえ、別に。ただ…」
もはやこの張り付け凝り固まった「仮面」は意味のをなくしてしまった。ジャック自身、それが作り物という感覚すらとうに失っていたのかもしれない。しかし不思議にも段では絶対見せないだろう素を無意識に他人にさらけ出してしてしまったのにさして後悔の念がない。本当に妙なことだ。

「あなたのようなアリスは初めてです。お手上げですよ。」
ジャックは苦笑いを浮かべる。自然に。
「アリスでなくても初めてです。」
とは口に出さなかったが、実際そうかもしれない。
「ふぅん。でも実際にどうなの?」
アリスはくだけた態度で聞いてくる。相手が素直になったと確信すれば警戒心もすっかり解いてしまったようだ。それでいいのかとも思ったが。
「どういうことでしょうか?」
「…あなたは周りをどう思っているの?」
結局、聞きたいことはそれだったらしい。やはり適当なんかではなかったのだ。アリスは1つの質問から相手の心理を暴いてみせた。末恐ろしい娘だ。誰よりも道化かまたはその真逆の何かか。とても少女らしい発想ではない。



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