淘汰の国のアリス | ナノ

勿論、こんな出会ってさほど経ってない娘にここまで言われる筋合いはこれっぽっちもないのだ。「アリス」だからといって例外なわけがない。どうやって諦めさせようか。表ではなんとか平然を保持したまま内心焦り始めていた。

「偽善であんなことをしないわ。偽善は「自分がいい人に見せるのが目的」の行動よ。」
「ええ、まんま偽善じゃないですか。」
「いいえ!偽善はしょせん偽りなのよ!あなたの行動からはそんな風には見えなかったわ!」
「…だから何だと言うんです!」
と言った瞬間、ジャックはしまったと口を長い袖に隠れた手でとっさに覆う。苛立ちがつい、表面に出てしまったのだ。
「そんな直観みたいなもので俺の何がわかるんですか…」
「直観をバカにしてはいけないんだから」
…女の直観は厄介だと聞いたことがあるがこういう事なのか。まだ子供といえ、油断をしていた。

「あなたは、普通に…人並みに周りに対して均等に好意をもっているんだわ。少なくとも、心から嫌いな人はそうそういないはずよ。だったら…」
「知ったような事を言わないで下さい!!!」
諭すように語るアリスがまだ何か言おうとしたところで、ジャックは耐えきれず、自分以外の他人によって自分を見透かされるのが怖くて、それを拒絶するように、そう賑やかではない空間には大きすぎるぐらいに声を張り上げた。

「………………」
ジャックも、もう取り繕うとはしない。逆に相手がこれ以上深入りさせまいと必死だった。切迫感や、普段こういった形で声を上げることはないせいか僅かに呼吸が乱れている。俯き気味になると帽子の鍔が邪魔をして表情が伺えない。やはり、人の感情を一番露にするのは目なのだ。

一方、アリスはしばらく相手のリアクションに圧倒されてきょとんとしていたが、数秒もしてから表情が綻びしまいには勝ち誇った笑みを浮かべるのだ

「…うふふ、してやったわ!」
「…………?」
拍子抜けした返事とともに顔をあげるがまだ怪訝に眉を寄せている。それさえも、アリスにとってはどうやら想定内だった。



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