淘汰の国のアリス | ナノ

アリスには少し余裕の色が見える。別に悔しくなんて微塵も無い。更に何か追い詰めてくるかもしれないという鬱陶しさを抱いていた。間ももたないので相手の出方次第でどうにか撒こうと適当に返すことにした。なんだか取り乱しつつある心境では上手く嘘をつけそうにないと諦めながら。

「その人はその人、例えばエースは俺の同僚。ピーターは女王の重臣であり俺達の先輩、女王陛下はこの国の統治者で我等が主…アリスは簡単に言えば異世界からの旅人ってとこですかね。」
かっこよくまとめめられた気もするが、あながち間違ってはいない。しかしアリスはより不満げにきっと睨む。
「そういうこと聞いてるんじゃないわよ!」
「…はあ…」
電話から一方的に興味のない話を聞かされている時の生返事のようだった。ありのまま普通に対応したはずが、一体アリスは何を求めているのか。ジャックはため息を一緒に吐いてしまいそうになるのをこらえた。
「そんな立場的なものじゃない!その人その人に対してどう思っているかよ!好きとか嫌いとか!気になるとか気に入らないとか!!」
なんた、そういう事か。ジャックはアリスの意図を理解した。頭のなかではのんきに「気に入らない奴なんか立場的に簡単に言えないな」と考えていた。そうとわかれば深くなる必要はない。自分らしく答えればいい。アリスから見ている自分に相応しい答えを選べばそれでいい。今度はジャックに少しばかりの余裕が戻ってきた。

「他人です。自分以外は全て他人。よく考えてみてくださいアリス。決してひねくれているわけではございません。個体的な観点から見ればそうなるでしょう?つまり、それです。俺はそうでしか捉えていません。」
ジャックはさしづめチェックメイトを予感していた。彼の言っている理論は個体的より、人をただの個体としての物理的な考え方で半ば強引だが、おかしな話ではない。人はみな、自分という個体で成り立っているのだから。アリスは先ほどの威勢はなく黙っている。手応えをかすかに感じていた。



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