淘汰の国のアリス | ナノ

「いつの間にか、猫さんになんて伝えるか忘れちゃったけど…あの時森で話したことを思い出したの。ひとつ引っかかるのよ。」
話に加担した本人も今思い出したようで、なんせ自らの価値観を出会ったばかりの他人に打ち明けてしまったのだ。さしてそれがまずいことではないが、やや心残りではあったためそう簡単には忘れられずすぐ引き出しから取り出せるようにしていた。

「ジャックさんは、どうなの?」
「俺は…と申しますと?」
単純に鈍いのか、それともわざとなのか。どっちでもアリスには関係なかった。
「私はあなたの事がわからないの」
「俺はアリスが何を言っているかわかりません」
ジャックもつい本音が出た。人は焦らされる度にそれがより重大な話だと思い込み、遠くへ遠くへと逃げていく真実を早く掴もうと必死になる。これはなにもロリーナを通して学んだのではく、アリスが自然に普段の日常から得たものだ(実際文章にあげたように難しく表現は出来ないが、友達との間ではよくやったものである)。
やはり、相手が大人であれど自分に関わるとなれ
ば食いつかないわけがない。狙い通りだ。

「ジャックさん。あなたは「周りの人をどう思っているの?」」
「…え、どうと仰いましても…」
待ちに待った本題に入ったのをわずかながら後悔した。流れでいくと「なんでいつも笑顔なのか」をとわれるんじゃないかと内心言い訳に近い理由を組み立てていたが、まさか、よりによって答えにくいところを彼女は突いてきたのだ。

「猫さんじゃなくあなたの話をしているんだからね!」
なんということだ。チェシャ猫たるなんとも都合のいい逃げ道を封じられてしまった。ジャックはどうしたものかと思考を巡らせている。彼女を納得させられるような言い訳すら浮かんでこない。こんなに答えに困ったのは初めてだと心底落ち込んでいた。



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