淘汰の国のアリス | ナノ

「夫人のことを知ってて…まさか!」
「やれやれ…」
一触即発の状況にも関わらず、ジャックは困り果てた苦笑で深いため息を吐いた。
「何も俺は夫人の家へ行くよう示唆した覚えはございませんよ。アリス自身が選んだことですから…全く…
「だから僕を行かせなかったのかい?」
困惑しているアリスはシフォンの方を振り向いた。黄みを帯びた緑色の双眸には静かな怒りが満ちていた、あくまで冷静を装っているみたいだが声もやけに低い。
「いや…関係ないです。」
ジャックはシフォンの方を見ることはなかった。
「…チッ…」
レイチェルがまだ何か言いたそうにするがこれ以上埒があかないと察したのか悔しげに舌打ちをしながら乱暴に手をはなす。アリスは少しだけ安堵した。油断は禁物だが。
「相変わらず困ったものですよ。」
ジャックは屈んで何かを拾う。レイチェルとの揉み合いの際に落としたのだろう。ジャックが、アリスと出会った時に見たピエロのような不気味な仮面だった。ゆっくり腰を上げるとピリピリした部屋の雰囲気には空気を読んでないぐらい不似合いな無邪気な笑顔でアリスの方を見た。

「アリス。貴方には特別にVIPルームにご案内いたします。」
「…VIP?」
アリスがきょとんとする中シフォンとレイチェルは警戒の視線を向ける。
「どういうことだい?」
「どうも何も…今日はぜひ、我が城に泊まっていただこうと思いまして。」
一番驚きをあらわにしたのはアリスだった。
「え…!?」
「女王陛下のはからいです。…明日、ちょっとしたイベントがあるんですよ。それも兼ねて特にアリスにはゆっくり羽を伸ばしてほしいと仰って…なに、楽しい楽しいお祭りですよ」
シフォンの疑いの目に気づき先を見て付け足した。




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