淘汰の国のアリス | ナノ

ハートの女王の城、ロビーでは三人の客人が思い思いにくつろいでいた。シフォンとレイチェルはテーブルの上にトランプをお互い一段ずつピラミッドのように積み重ねていくというなんとも不謹慎窮まりない遊びをしていた。レイチェルに番が周り、自分の手元から二枚カードを引いて慎重に乗せる。二人は真剣そのものだ。

一方フランネルは珍しく瞼が開いており、適当に絵本を読みあさっていた。ソファーの周りには「赤ずきん」や「ハーメルンの笛吹き」など比較的乙女チックからは掛け離れた童話が散乱している。今読んでいる本は「パラレルスウィーツワールド」というもので、一人の少年がお菓子の世界に迷い込む冒険味あふれるお話だ。

「…これを読んだら、きっと甘いものは懲り懲りになるわ。…ダイエットに…いいかも」
一通り読み終え本を閉じて膝の上に置いて、男同士の(地味すぎる)真剣な戦いの行く末を見守った。

「よぉ〜し…ふぅ〜…」
細く深い息を吐きながらレイチェルは二枚のトランプをそれぞれ支え合うように立てる。手元は僅かにだが震えていた。なんとか立ちそうな実感にそっと手を離そうとして…。

コンコンとドアを軽くノックする音が、レイチェルの集中力をまるで今まで積み上げた物が一気に崩れるように落とした。
「うわあああぁ!!?」
そして今まで積み上げたトランプも一気に崩れ落ちた。

「だっさ。はい罰として今日一日蝶ネクタイ頭につける、いいね。」
「聞いてねえし!!」
シフォンは、わなわなと緊張とは違う意味で震えるレイチェルを無視してドアを開けた。

「おや、アリスかい…おかえり。」
「ただいま…」
そこには、少し気の沈んだ声で返事をするアリスがいた。

「おお!なーんだアリスか!どうだった?楽しかったか!?」
さっきまで一致団結していたトランプをほうっておいてレイチェルが立ち上がった。あえて「どこへ行ったか」と聞かないのは、きっとアリスなら自ら詳しく話してくれると思ったからだ。

だがアリスの様子がどこかおかしいのは誰から見ても明らかだった。




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