淘汰の国のアリス | ナノ

「案外近くで手に入った…なんだ、あの時の小娘ではないか」
「…私はアリスよ。」
あまり小娘呼ばわりも気に入らないアリスはやや不機嫌そうに自らを指す名前を主張した。シグルドの方もそれ以上は言及せず、二人の間に入っては死者を悼み泣き言が絶えない風景を見つめた。
「それは何の花?」
手に持っている可憐な花が近くで揺れるのでますます気になった。正直なところ、今は余計な質問をするべきではないと思っていたがタイミングを逃せば二度と答えが聞けない気がしたのと、真相を知らないままが逆に怖くなってきたのだ。

「適当に摘んできたからな。葬儀が終わったらこいつを供えるのだよ。…お墓のとは、別にだ。」
アリスはこの国にどんな風習や習わしがあるかも知らない。でもシグルドも、彼女の死に対して何らかの感情はあるらしい。確かご近所でもあったような、全くの他人ではないみたいだ。

「今行ったらいいじゃない。猫さんも、ご主人様が死んじゃったのよ?」
本当はアリスも今すぐここを抜け出し彼女の最期を見送りたかった。反対に、女王の事だから夫人は首と身体が繋がってない状態で収まっているに違いない。つい最近、元気で明るく笑っていた人物のそんな惨たらしい姿を目の当たりにして普通の少女は正気を保っていられるだろうか。今のアリスは現場を見ておらず、知らない場所で知らずに亡くなったという事で現実味が沸かず場に合わないぐらい落ち着いて無情感にもとらわれていた。更にアリスはよそ者であるに比べ、横にいる二人は親交がある者と一緒の空間で過ごしている家族同然の者。なぜ参列せず遠くで眺めているだけなのかが不思議でならない。

「アリスは、ペットが葬式に参加しているのを見た事があるかい?」
「…それは…まあ…」




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