淘汰の国のアリス | ナノ

チェシャ猫はいつもなら適当にはぐらかしそうな所をめずらしく真面目にまともに答える。
「出かけてる所を連れていかれたんだって、お城の人に。」
「………」
おそらくアリスが夫人の屋敷を出てからお城につくまでの間に執り行われたのなら納得できる。殺伐としたゲームをやっている間、それより前にアリス達が城についた時にでも夫人は…
「でも!そうまでしてなんで夫人が…」
「さあ、それは…猫もさっぱりだ」
結局の所公爵夫人がそうに至った理由はお互いにわからないままであった。真相は隠されたまま夫人は人知れない所で誰の目に付かずにその命を終わらせられてしまったのだ。

「君なら知ってるんじゃない?」
「…え?」

チェシャ猫が前を向いたままアリスではない誰かにそう尋ねた。勿論、アリスは他に誰がいるわけでもなく自分に聞かれてもわかるわけがないので困惑している。
「ずいぶん近くで採れたんだね。」
「ちょっと!私を無視しないでよ…」
チェシャ猫はそんなアリスを無視して話しかける。思わず強く問い返そうとした時、後ろの方から枯れた草を踏む乾いた音がした。その僅かな音が耳に入る前からすでに気配を察知していたのか、それかもっと先に音に気付いていたのか。猫も人より幾分か五感が優れているようだ。アリスは咄嗟に後ろを振り向いた。

「………虫さん?」

アリス達の元に歩み寄ってきたのはキノコの森でお世話になった青年、シグルドだった。アリスと面と向かうのは初めてでやはり人並みの大きさだがチェシャ猫と並んでみると案外背は低い。彼て再び会って妙な点にいくつか気づく。まず特徴的だった派手なファーは今回身につけておらず、キセルを持っていた手には白い小さな花と草を束ねたものが握られていた。




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