淘汰の国のアリス | ナノ

「…………。」
発せられた言葉をその通りに受け取ったのか何も言わず、変なものを見るようにアリスを見下ろした。どうしてそんな顔をするのだろう、と考えていたチェシャ猫はまだ人間の感情にうまくついてこれずにいた。

「…嘘よ…なんで、え?なんで死んだの?あの時はあんなに元気だったじゃない!」
アリスの記憶に新しい夫人は笑顔で楽しげに話に夢中になったり、時折物をぶん投げたりもした元気な姿のままだった。そのあと何が起こるかなんて考えるはずもない。

だとすれば従者達が着ているのは喪服で、今屋敷では公爵夫人の葬式の真っ只中である。信じたくないのにたたき付ける現実。次第に諦めを覚えざるをえなくなってきた。

「猫はね、知ってるよ。知らされたんだ」
「…何を?」
突然チェシャ猫が口を開く。しかしアリスの方ではなく、屋敷の方を眺めながらだったが。
「夫人は…女王様に処刑されたんだって」
「な…なんで!?」
アリスは耳を、全てを疑った。ハートの女王のローズマリーは確かに自分の気にくわないことがある度にその場にいた人に対し手当たり次第に「処刑」を下す手の付けようのない暴君だが、なぜわざわざ遠くにいる人を斬首刑に処せればならないのか。そうまでするほど一体彼女は何をしたのだろうか。
「わからない。でもたまに言ってた」
アリスは視線だけチェシャ猫に向けた。やはり笑っても、泣いても、怒ってもない無表情だった。
「女王様と鉢合わせなんかしたら、きっとすぐに首はねだって」
「ずっとお城にいたわよ?」
実際ローズマリーは城からは出ていないはずだ。ほとんど姿を見ている上に、仮に出歩いていたとすればアリス達がロビーにいる間。その時間内に公爵夫人が処刑されたとしたら準備が早すぎる。アリスはすぐに矛盾をついた。





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