「ネズミさんと犬さんともっと仲良くなりたかったけど、彼等がどこに住んでるかわかりません。ましてや森を探すだけに時間を潰す事もしたくありません!…ぷっ、これじゃあまるでジャックさんみたい。」
その二つ目の役の問いに答えているつもりだがなぜか丁寧な敬語になった。そして似た口調で話すとある人物を思い浮かべては可笑しいとばかりに笑っている。
「…ウサギさんの家は正直怖いです。今は主人はいないでしょうし仮に私だとばれていなくてもいい心地がしないわ。虫さんは…私一人ではちょっともたないかな。」
途中で素の口調に戻った。きっと二つ目の役はもういない。過去にウサギさん、ピーターの家を破壊した立場にとってはかなり居心地が悪いものだ。シグルドも悪い人ではないが、アリスからすれば歳の離れた頑固なおじいちゃんと話してるような感じた。下手なことを言った度に怒られたらたまったものではない。
「ウミガメさん達の所に行ってもいいけど、水着も遊び道具もないまま海に行ってもねー…」
海でただ波の流れを見るだけもつまらない。どうせなら飛び込んで泳ぎたいと思うぐらい活発な性格である。
「…という事はーあそこしかない。公爵夫人の家しかないじゃないの!」
と張り切って言った。あそこしかない、等の言葉には「限られた場所しかない」といった残念がる気持ちは更々ない。逆に嬉々としている。
「突然押しかけただけでもびっくりしちゃうかしら…うふふ。夫人さんって猫好きだから気が合うのよね!料理も美味しかったし、チェシャ猫さんにも会いたいわ!」
今の頭の中には夫人の顔や美味しそうな料理、この国で初めて出来た友達のことでいっぱいだった。楽しい思い出を作るならあの場所ほど相応しい所はないとまで思ったぐらいだ。
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