淘汰の国のアリス | ナノ

「それでは、淘汰の国を満喫して下さい…」

ジャックはエースが入ってきた隠し扉から姿を消した。高い足音がしばらく鳴り響いては徐々に聞こえなくなる。立っていた位置からは普通の出口よりは近いがあのドアから出た方がすぐに廊下に出れるはずなのだが、隠し扉からどこへ繋がっているかも彼の行き先も知らない。

「隠し通路があるのか?」
レイチェルはよほど気になっているのかソファーの下を見を屈めて覗き込む。残念ながら空洞で向こうの景色の植木鉢とレースのカーテンしか見えない。それよりアリスはここに入る前とは別人のようにはしゃいでいた。

「すごい!すごいわ!私瞬間移動なんか出来るのよ!?」
同じ人間であるシフォンの袖をぐいぐい引っ張る。当のシフォンはやっと消えてくれた鬱陶しい連中のせいで精神的にも疲弊しており、アリスの喜びを分かち合う気力がない。

「あー…うん。そうだね、それはよかった。てか自分が出来るようになったみたいに言うがカードの力だからな?」
「使えばこっちのものよ!!うふふ…どこに行こうかなー。」
かなり上機嫌だ。時々跳びはねたりしている。なんだかんだで1番ショックの大きかったであろうアリスがいつかは立ち直りこうやって笑顔を見せてくれるのを心から願っていたのは事実であり、その点に関してはジャックに感謝するしかないのだ。

アリスのジャックに対しての畏怖も最初出会った時と比べたらこのプレゼントがきっかけでほぼ払拭されたに違いない。

「あーあ、定員一名かー。残念」
レイチェルは部屋の物色を諦めソファーに腰を下ろした。フランネルはその隣で膝を抱えて丸くなって座る。見ているととても和やかな画だ。
「まあ…ジャック達が干渉しないなら大丈夫だ。心おきなく楽しんできたまえ」
シフォンの顔にも自然な笑みが戻る。

「定員さえなかったらなー。デートとか出来たのにな。」
「貴方とだけなんて行かせないわ」
「そうだよ、怪我人は大人しく永遠に寝てろ」
本気なのか、はたまた冗談か。レイチェルの呟きにやや険しい顔のフランネルと真顔のシフォンがすかさず反論した。アリスは顔を赤くして目を泳がせている。

「えっと、じゃあ行ってくるわね!」
とどこか逃げるようにしてそそくさと背中を向け、みんなから行ってらっしゃいと言われながら、彼女はある一点の場所を頭に浮かべながら強く念じた。そして、刹那にして青い光がアリスを掻き消す

―――――――……




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