淘汰の国のアリス | ナノ

「なんだ、これは」
シフォンが横から覗き込むも見たことがないのか腕を組み首を傾げて考え込む。

「こいつは持ち主が行きたいと念じた場所へ瞬時へ飛ばしてくれる、いわばテレポートの力を秘めた物になります」
「な、テレポートですって!?」
アリスは大袈裟な反応をした。テレポートはつまり瞬間移動であり、人間がなせるはずがない超能力をこの薄いカード一枚で現実にしてしまえるのだから。もしやさっきの二人もこれを…なら素直に部屋に現れたらいいんだが。動揺しているアリスに対しエースはその様子を温厚な眼差しで見つめている。

「部屋を整理してたら出てきまして。女王陛下からのご褒美だったんですがぶっちゃけそんなに使わないし、貴方に差し上げます」
「…でもなんで今、私に?」
アリスからしたらわざわざお城にまでやって来て一応招いた立場にいる人間がこんなさりげなくよそへ解放する意図が理解できなかった。
「何にせよ、アリスがこの国にいる期間はそう長くはありません。ですから少しでも思い出作りに…と思いまして。」
と言ってにっこり微笑んだ。アリスの表情が晴れやかになる。カードをぎゅっと握った。
「ありがとう!ジャックさん!私早速使ってみる!」
「ええ、ご自由に。ただしそれには条件があります。」

ジャックはシフォンの方を一瞥してから相手に無駄に感ずかれないよう優しい声色で告げた。
「必ずアリス一人で行くこと。特に帽子屋とは絶対に一緒に行ってはいけません。」
名指しをされたシフォンは不適な笑みを浮かべる。
「ずいぶん信頼されてないようだね。」
「理由は貴方自身が1番おわかりでしょう?」
ジャックは落ち着いた態度で微笑みながら返すし、疑問符を頭の上に浮かべたままのアリスの方を振り向いた。

「あと、30分経ったら強制的にこの場所へ送らされます。そこのところをしっかり頭に入れて下さいね。」
アリスは笑顔で大きく頷いた。たかが30分、されど30分だ。短い時間だが顔を合わせるだけなら十分だしどんなに遠くへ行ったり迷っても時間が経てば自動的にこちらへ戻れるのだから不安もない。





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