淘汰の国のアリス | ナノ

「…こうなったら…!」

それでもジャックは最後の切り札を使った。ポケットから取り出したのは小さく折り畳まれた紙切れだ。
「…なんだ?それは」
「これを見たらきっと貴方の心は変わるでしょう!」
エースは紙切れを受け取っては開く。正直堅物っぽいイメージがある彼が一体何で心を動かされるのかアリスは気になった。

「これは…!」
エースの表情がその紙切れ、及びチラシを見る途端に真剣になった。少し離れた場所からは何が書いてあるか見づらいが、チラシの端がめくれてそこから見えたのは「食べ放題」の文字だ。

「次世代のパティシエを選考する為のオーディションを兼ねてのデザートバイキングですよ…!」
「な…何だと!?」
ジャックの予想は的中した。アリスの予想ははるかに外れた。まさかの甘党だったのだから。
「ぐ、う…だが…」
「俺がおごりましょう!!貴方はタダで好きな物を遠慮なく食べられるんですよ!二度もおいしい話じゃないですか!」
僅かに残っていた理性が大きくぐらついた。これでとどめだとジャックは勝ち誇った満面の笑みを浮かべる。
「…そ・の・か・わ・り、今回の事は二人だけの内緒ということで☆」
「むう…わかったよ…」
エースの女王へ対する忠誠とジャックに対する悔しさはデザート食べ放題(しかもタダ)にはかなわなかった。

「エース様ー!兵士達がトラブルを起こしたもよう、至急第ニ廊下へ」
突然ドアが開く。白衣を着てエースと同じ帽子をかぶった少年がそこにいた。
「了解。…いいか、ジャック。忘れるなよ!絶対にな!」
「はいはーい」
ちゃんとしたドアからエースは呼ばれるがまま急いでロビーを出ていった。

「…あー…今のでせっかく考えたトーク忘れちゃいました」
肩をすくめちょっとの間ドアの向こうを見送った後、何か思い出したようにアリスの方を振り向いた。

「そうだそうだ!アリス、貴方に俺からプレゼントがあるんです!」
「…プレゼント?」
ジャックは戸惑うアリスの手の平に一枚のカードを握らせた。長い袖で隠れて見えなかっただけで手には持っていたのだ。タロットカードのように複雑な絵が描かれてあり、上には「traveler.30min」という文字が記載されていた。




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