淘汰の国のアリス | ナノ

本当にわずかな時間の出来事だったが、声と喋り方だけで大体誰かは予想がついた。目に映った長い銀色の髪でもうほぼ確定した。

「…ジャック…さん?」
「何言ってるんだい僕には何も見えなかったし聞こえなかったよ」
振り向いたシフォンの顔はそれはもう引き攣った笑顔だ。
「えっ、でも今エースさんの後ろから」
「やだなあアリスそれは幽霊だよ、君はきっと疲れてるんだ。そうに違いない」
「何も見えてなかったんじゃなかったのか?」
「うるさい低脳ウサギ!!」
確かに何も見えてない、聞こえてないと言っておきながらドアを閉めた則ちその存在に気づいていたのだと矛盾を突っ込んだレイチェルがまさか「低脳」と罵倒されるとは。低脳ウサギは「な…低脳!?」とどうやらカチンときたようだ。アリスもシフォンの行動に納得がいかなかった。

「疲れてるのと幽霊が見えるのは関係ないじゃない!幽霊は人の恐怖心から生まれる幻なのよ!?」
「お前はエースの事を怖がっているだろう!」
「じゃあなんでジャックさんの幽霊が見えるわけ!!?」
「ジャックの事も怖いんじゃないのか!?」
しかもいつの間にか幽霊になっていた。どうにも屈しないアリスにシフォンは苛立ちを覚えた。
「怖いと思った人が幽霊になって出てくるわけないわ!」
「…やはり怖いんじゃないか!」


「ちょっと、人を勝手に殺さないでくださいよ。」
「…なっ!?」
アリスとの口論に気をとられ力が緩んだ隙に今度は向こうの方が一気に押してきた。ドアの隙間から見えたのは物凄い笑顔のジャック(実在)だった。

幽霊ではないのは確かだが、シフォンは足を踏ん張り全身の力を込めているのにジャックの方はといえば笑顔のままびくともしないのだから彼が何者かを不思議に思いたくなる。

「ぐ…ッ、一体…何しに…!」
「やだー!皆さんから「俺へ対する恐怖心」を楽しいトークでポイしにきたんですよ!」
「…君に抱いているのは恐怖心だけではないのだがね…ッ」
シフォンは声にまで力がこもっている。一方ジャックは多分アリスが見てきた中で一番楽しそうな表情をしていた。胡散臭い、何を考えているかわからない上に不気味で残忍という印象からゲーム時では何気にかばってくれた事から実はそれ程怖い人ではないかと思いつつあったが、なんだか今のジャックはアリス以上に子供っぽい。





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