淘汰の国のアリス | ナノ

しかし、しばらく謎の沈黙が続く。そーっとアリスはシフォンの方に視線を向けた。その時の彼の表情はまるで嫌な物を目の前にしたようで少なくともこっちではなくドアの向こう側を睨んでいた。
「なんで…お前が…?」

きっとこの流れでの台詞の持つ意味としては「なんでお前が謝るんだ」と思い込んでいた。許してもらえるかどうか以前に、その視線と言葉が自分ではなく違う相手に向けられていたのがおかしなことであった。

もしかしたらそのままレイチェルと話しているのかもしれない。アリスは上目遣いでドアを見上げた。

「………?」
そこにいたのはレイチェルだけではなく、もう一人鎧を身につけた背の高い青年がいた。一瞬見ただけで誰かわかったのだが、すぐに信じられずしばらく顔を上げたまま立ち尽くす。わかるも何も最近見たばかりの顔だ。頭には鮮明に残っていた。

「貴方は…!!」
無意識に震える声。レイチェルはたいして驚きもしない。アリスにとって恐怖とともに刻まれた顔は「あの時」と同じ無表情で淡々とした口調で話した。
「そういえば自己紹介がまだだった。私はエース。軍事管理責任者及び城全体の警備を担当している。…ただの雇われ兵だ」

聞くあたりではかなりの大役を任されているみたいだが、ただの雇われ兵が担うにしては少し内容が重い気もする。彼なりの卑下なのだろう。

「…お前が何者かは関係ない。僕が聞きたいのはなぜ、お前が、ここに、いるかだ。」
エースが実際何者かは関係ない。何者であったって今更アリスの印象は変わらないのだから。シフォンはわざと区切って強調しながら彼に尋ねた。

「自らを名乗るだけに貴様らに会いに来るほど無神経ではない。」
「…つまり何か用件でもあるんだな?出来れば手短に頼む」
手短にというのもアリスを配慮したからだ。シフォンの表情に嫌悪はない。隠しているのだ。エースもそれを察している。





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