淘汰の国のアリス | ナノ



*******

アリスとシフォンは案内されたロビーにいた。時計の針が進む音ぐらいしかしない静かな部屋だ。二人には会話がない。アリスは女王に用意してもらったローブを着ている。ショックと疲労から話をする気力がなくソファーで抜け殻のように力なく座っていた。シフォンは窓際の壁に背をもたれながら難しい顔をして立っている。

「……帽子屋さん」
長く続いた静寂の中アリスがか細い声で少し離れた場所にいる人物に声をかけた。
「…三月さん…大丈夫かしら…」
先程から頭の中にあるのは深い傷を負った仲間の姿だった。それはお互い様だ。
「心配するな。信じてやれ。」
「………。」

それっきりまた沈黙が続いたが、今度はシフォンの方から口を開いた。
「それにしてもフランの奴はどこに行ったんだ…?」
「さあ…」
もはやそこまで頭が回らず生返事になってしまう。


その時だった。部屋のドアを二、三回ノックする音が聞こえた。
「僕が出るよ。」
そう言うといつもの紳士的な澄ました態度を装い、ドアの方へ歩み寄りドアノブを回す。ガチャンと何かが外れる音の後に開いた隙間の向こうにいたのはフランネルだった。

「フランじゃないか。一体どこに行ってたんだ?」
「…ふぁーあ…ん、おトイレに行ってた…」
大きなあくびをして場に合わないぐらいのんびりとした口調で答えた。そんな相手に呆れと脱力さえ覚え何も言わずに彼女を部屋に通した。しかしまだ向こうに誰かいるのを感じ、その誰かはドアの隙間から間抜けそうな顔でを覗かせた。その人物にアリスとシフォンは驚きをあらわにした。

「…お、お前ッ!!」
「三月さん!?」

さも当たり前のように姿を現したのは深手を負い瀕死なはずのレイチェルだったのだ。服はアリスと同じように洗ってもらっているため上半身は裸で腹部には丁寧に包帯が巻かれていた。





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -