「どこが大丈夫なのよ…!あのままじゃあ死んじゃうわ!」
「死なないように斬った。」
アリスは彼の言葉に戦慄した。
「…あ…貴方ッ!!」
「奴はルール違反をした。私はそれを止めただけだ。」
にしてもやり過ぎだ、と彼に言い付けたかった。しかし不安や恐怖が一度に込み上げ言葉が出なかった。大切な仲間を傷付けた剣が目と鼻の先にあるという恐怖とその仲間が今瀕死の状態にあるという不安。そして、もし下手な事を言ったら自分も同じようになるのではないかという自己守護によるさらなる不安と恐怖。
そんな最中。階段を上がる担架に一人の人影がそこへ駆け寄り、アリス達が彼の近くにまで来たのに気付き振り向いた顔は今までに見た事のないぐらい心配そうな表情で狼狽しかけていた。
「帽子屋さん…」
「アリス!!………!」
アリスのその姿を見ると言葉を失った。血に汚れ傷だらけの、もぬけの殻のように力のなく生気の欠けた少女の姿に驚愕と絶望しかなかった。同時に目の前の騎士の側のアリスに危機感を感じシフォンはひどく取り乱した様子でエースの手にしがみつく。
「アリスから離れろ!触れるな!!」
だが彼の力でもエースの固い腕は全く動じない。片方の手で突き飛ばし冷たい瞳で見下ろしながら一言告げた。
「ロビーに集合だ。ついて来い」
エースは再びアリスの手を引っ張り階段を登っていく。二人の後ろ姿をただ、悔しそうに見つめしばらくの間立ちすくんでいた。
―誰のせいでこうなったか、一度見極めるべきだね―
「……ッ!!」
突然、シフォンは耳を両手で塞いだ。
―責めはしないけど、間違えてはいけないよ。×××××××―
「…うるさい。わかっている」
一人呟きゆっくりと階段を登った。
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