淘汰の国のアリス | ナノ



「………ッ?」

アリスは剣を握ったまましばらく立ちすくんでいた。そう、目の前に広がる光景は今までに見たことのないぐらい現実から逸したもので、残念ながらそれは現実だ。血の臭いと深紅が視覚と嗅覚を刺激する。吐き気が襲い無意識に口元を抑えた。

顔に何か濡れた感触に気味悪さを感じアリスは手の平を見た。銀色に輝く防具、だけではなく服全体的に纏わりこびりついた血!だが今更アリスがそれを見てここまで怖がるだろうか!

アリスの記憶は途中から一気に飛んでいる。最後に頭にあったのはレイチェルが自分をかばい敵を倒していって側にはローズマリー達もいた。そこでただ一人、葛藤に苦しんでいた。次にアリスに誰かが話しかけてきたのだ。

そこから数分間の記憶はない。彼女にとってはどうやって出口付近まで来たのかさっぱりわからないのだ。気が付いた時には、自らの手で人を倒していた。言い返ればその手で殺していた。

斬った感触、断末魔、足元に転がる生首はあの時より更に生々しく残っている。

アリスは知らない、他人が自分の奥深くに干渉したことを。そのため自身を責めるしかなかった、無意識に自ら敵を倒していったのを。

「…私が…やったの…」
認めたくない現実を受け入れようとするが彼女の「常識」や「人格」が拒む。アリスを責める人は多分誰もいない。これが理想でルールなのだから。だが、こんな形を自分は望んでいたのか?ひたすら責めた。ついには剣から手を離した

「……あ…そう…私がやったんだ…」
「なんだと…?」
出口の方からローズマリーが歩み寄ってくる。その表情はかつてないほどの形相だった。その側にはジャックとエースも引き連れており、どちらも血生臭い戦いを経たとは思えないぐらい澄ました顔をしている。





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