淘汰の国のアリス | ナノ

彼らが本来の意思を取り戻したのだ。エースは皆に背を向けローズマリーが迷路から抜けるのを待っている。ジャックはもう一枚のカードを取り出す

「じゃあこれも必要ありませんね。」

レイチェルは彼のしている行為が何なのかわからなかった。ジャックが他人を操作する際にカードを用いるのは知っているがそれを破いてどうなるかもは知らないのだ。いや、痛みのあまり意識が朦朧として考える力すら弱まっているのかもしれない。
躊躇いなくカードの両端をつまんで前と後ろに引っ張る。わずかに真ん中に切れ目が入った。


「やめろッ!!!」

沸き上がる観客の声に掻き消されつつも一人の叫び声が聞こえる。シフォンは気づいているのだ。トランプ兵の次は誰が元の状態に戻るのを。レイチェルも彼を止めに行くのに必死で、またアリスを信じ後を任せてしまったせいでこれからその行為が何を意味するのかを想像していなかった。まだゴールにたどり着いていないアリスが普通に戻った状態で見るものがあまりにも悲惨なことを。しかし彼の声は遠くにいるジャックにまで届くはずがなかった。

ジャックはそのままカードを、真っ二つに破ってしまった。


迷路の中では取り残されたアリスは最後の一人に差し掛かっていた。レイチェルがいなくなったのも兵士が突然弱腰になったのも気にしないでそのまま勢いよく剣を振って―…

―――――…



「あ゙あっ、しまった!!」
観客が騒ぐ中、城の渡り廊下の近くでバラの花を二人の兵士が手入れしていた。
「あーあ、肝心の花切っちまったよー…」
「お前ほんと不器用だな。こんなのばれてみろ、同じ目にあうぜ?」
一人の兵士の足元には一つの深紅の鮮やかなバラの花が落ちていた。剪定ハサミを片手にうなだれる。
「まーごみ箱に捨てとけば大丈夫だろ。」
「…そーだなー」
憂鬱そうに再び腐りかけた葉っぱや枯れかけのバラを摘んでいった。
「それにしても皆大変だなー」
「ほんとそれ。側近つっても色々アレな仕事させられるんだろ?」
「高い給料貰っても俺はゴメンだな。庭の手入れだけで普通に食っていけるなら上等よ」
パチンと茎を切り、たわいない世間話をしながら仕事をゆっくりこなしていった。





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