淘汰の国のアリス | ナノ

彼が言うにはアリス自身には「自分が行動しなくては」という責任感と「こんなこと出来ない」という恐怖感から力による暗示で直接彼女の心から後者を取り除き前者の気持ちを増幅させた、アリスを操ったわけではなくあくまで彼女の意思で行動したのだ。兵士に至っては身体の隅々まで操っていたのだろう。いずれにせよ、レイチェルはそれを安易に許し見逃すような性格ではない。

「だからって…許される事じゃねえだろ!」
「貴方一人に許しを貰わなくても結構です…まあ…」
ジャックは軽く口々端をあげ続けた。
「彼女にも「素質」があるんじゃないですか?」
「ぶっ倒す!!!」
堪忍袋の緒がとうとう切れ、自分の中で熱い何かが頭まで込み上げてきた。ジャックは多分、その様もアリスが本当は自分の意思で他人を惨殺していく様子も端から退屈しのぎの感覚でしか見ていなかったのだろう。それを考えると彼がとてつもなく不気味に見え、早くもその笑顔を消し去りたいが如く剣を振り下ろした。


「……ッ!?」


だがその一振りは大きな刃で受け止められた。鉄のぶつかり合う音が鳴る。
「ゲームは既に終了している。しかも貴様の攻撃可能対象は違う。」
エースが観客席から様子の変化を察して急いで駆け付けたのだ。ありったけの力を込めているのにエースの剣はびくともしない。
「…ッのやろ、公平じゃなかったのか!」
「公平に私達にも襲うように仕掛けて貰った。途中での数もあの後埋めた」
「うわっ!!」
一旦剣を下げた後力いっぱいに前へ押した。バランスを崩し後ろによろめくレイチェルをエースは容赦なく、彼の肩から腹部にかけて斜めに剣を振り払った。
「…あっ…う…ッ」
致命傷は免れたものの激しい痛みにその場に崩れ、血の滲む腹部を抑えながら呻く。エースは剣を鞘にしまいジャックに告げた。ぼやける視界で二人の表情は平然なすまし顔をしている。

「もうそろそろ解くんだ、女王陛下も間もなく出られるだろう。」
「オッケー。いい頃合いですし残り少ないからなんとかなるでしょう…」

ジャックは一つのカードを破いて捨てた。沢山の人を支配していた元凶がひらひらと地面に舞い落ちる。その瞬間迷路の中の遠くから悲鳴が聞こえるのがわかる。





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