淘汰の国のアリス | ナノ


「ダメだ…ダメなんだ…アリスは純粋で優しい少女でないとダメなんだ…僕の望んだアリスは…」
シフォンは譫言のように呟きだした。ひどく慌てている。いつも見る気取った様子もどんな時でも冷静な態度もなかった。ただ何かを憂いているにも見える血相だ。その急な変貌ぶりに見兼ねたフランネルは彼を問い詰めはせず隣でなだめた。

「……優しさは強さにもなるのよ……」
「…フランネル?」
はっと我にかえったシフォンに更に続けた。
「…それが彼女の意志ならば後悔はないはずよ…よそ者が口出しすることじゃない…」
「………彼女の意志…。」
アリスの意志。それが一瞬パニックに陥ったシフォンを落ち着かせる決め手の言葉となったのか、いつもの冷静さを取り戻しつつあった。

「…僕は…アリスがそう望むなら…。」
とは言うが、まだ腑に落ちない。シフォンとしては今のアリスがそのまま仮に「物語上のアリス」となってほしくないのだ。もしそうなった場合、彼女がそこからどんな道を歩むか大体想がついてしまう。

―…一度手を染めればおしまいだ、アリス―

たとえゲームには不参加の観客とはいえこちらはプレイヤーの仲間という立場。むやみやたらに動けない自分を悔やんだ。自然に拳に力が入る。

「…………………?」

顔を上げた視線の先には、変わらず迷路の壁をやや離れた場所から眺めているジャック。だがシフォンは変わらない風景に妙な違和感を感じた。

「……手持ちが増えている?」

ジャックは人を操作する際に金色に輝くカードを使用する。そのカードに力が秘められているのか自分の力を放出するのかはわからないが長年を経て学んだことだ。そしてジャックの恐ろしい所は複数の存在を一度に操れる魔力。則ち、操作している人がみんな同じ「トランプ兵」ならばどんなに数が多くても一つの「トランプ兵」という存在(カード)にまとめ、自然に動いているように行動パターンもバラバラに操るというのだ。実はシフォンが最初彼と出会った時はまだそこまでの力はなく、彼もまた長年を経て着実に力をつけていた。





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