淘汰の国のアリス | ナノ

「…私は大丈夫よ。…なんだか吹っ切れちゃった。」

そう剣を持ち上げたアリスに恐怖も怯えもない、真剣な眼差しと表情だ。だがただでさえ妙なのに声にトーンの鷹揚がなく淡々としているのが更なる違和感を感じさせる。

「こんな所で時間の無駄よ。差が開いてしまうわ、急ぎましょう。」
「お、おう…」
戸惑いを覚えつつも確かにこうしている間も刻々と時間は過ぎていってしまう。
「どうしたか知らぬが、退屈はしないようじゃ」
ローズマリーは「証拠」をしっかりと目と記憶におさめた後、満足したのか迷路を奥へと進んだ。エースもその後を無言でついていった。

「本当に大丈夫かよ。」
身体的な心配より、まず彼女自身に一体何が起こったのかが不安で念には念を押して聞いてみた。
「愚問ね。吹っ切れたっていったじゃない。」
冷たさすら含んだあっさりとした返事に、はたして今まで通りに接していいのか一瞬迷った。とはいえど仮にアリスが本当にやる気になってくれたのなら個人的にこれ程都合のいい事はない。無駄に気を使わなくていいのだから。

「…ならいいんだが…」
いまだに戸惑いを拭い切れないまま迷路を進んだ。

一方で観客はかなりの大盛り上がりを見ていた。歓声に交えて中の様子の変化を丁寧に実況している人がいる。マイクを使っているのかよく響き渡る。

「おおーっと!!これはなんと!アリスが自ら剣を振り回してコマのように暴れ出しているぞ!!?」
歓声が更に沸き上がった。

「何だって…?」
シフォンも予想外だったらしい。何を思ったかベンチから腰を上げた。
「うぅー…んー、どうしたの?」
うたた寝程度だったフランネルはわずかなベンチがきしむ感触で目を覚まし膝に埋めていた顔をあげた。額は膝のあとが赤く浮かんでいる。
「…アリスが自ら行動を起こしたらしい。」
不安そうに入口の奥を睨む。
「いいじゃない……別に…」
「よくないッ!!!」
フランネルがまだ何か言いたそうにしているのを遮ったシフォンの表情は焦っていた。彼の気持ちをわからなくもないがそこまで感情を露にする程の問題があるのかとも疑問に思った。





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