淘汰の国のアリス | ナノ



そこは、不思議の国…というよりどこの国でもある普通の景色だった。

たくさんの木々の間に整備の悪いでこぼこの広い道が見る限りかなり遠くまで続いている。その道の遥か向こうにはぽつぽつと民家が建っており、その家もほとんどは木造の質素なものだ。引っくるめて言えば、何回も見慣れているごくごくありふれた、ただの田舎町である。

アリスの一家は街の中では目立つぐらいのお屋敷に住んでいるが街自体は都会というわけでも田舎という程でもないが、少し離れると建物の数が格段に少ない田舎がある。事実そこでなくても外出の際そのような場所を何度も通るのでアリスには田舎という感覚すらなかった。

「…あ〜あ…期待して損した。」
深いため息をついて扉を閉めず砂利道を踏んだ。歩く度にため息が出そうなぐらいがっかりしている。
少なくとも「不思議の国」だと思いさえすればこの田舎町でさえ楽しい気分で歩み出せたものだがアリスはまだ不思議の国という所がどんな所か実感もよく沸かず、最初にそう落ち込んでしまってから今更そんなふうに考えることもできない。

しかしアリスは、前向きというより子供には不似合いなぐらい冷静かつ常識ぶったことを考えた。
「でもどこの国や世界でも有り得る光景じゃない。都会の中にも田舎はあるし、逆に言えば田舎の中にも都会はあるわ。建物も見えるし、もうちょっと向こうまで行けば何かあるかもしれない!」
胸を張り背中を伸ばし意気揚々と道を進んだ。

「できれば道中何もありませんように…!」
「ばあっ!!」
「ぎゃああああああ!!!??」

突然木の陰から何者かが目の前に飛び出してきた。アリスは何もないことを祈ったばかりでコレなので顔を青くして叫んだ。



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