下敷きになった敵の苦痛な絶叫に耐えられず耳を塞ぐアリス。ゆっくりと降りるレイチェルは息が全く上がっていない。
「…まだだ…まだ足りない…。………」
低い声で呟いては急に黙る。ふと後ろを振り向いた。もう一人のパートナーを忘れているわけでななかったのだ。だとしても今の心に「彼女を気遣う」という気配りは薄れていた。
「…………三月さん…。」
少女はまるで獣に追い詰められ逃げ場を失った獲物のように、涙目で小刻みに震えていた。アリスの心の中は色々なことでの恐怖でいっぱいだった。
相手が自分をどんな目で見ているかはすぐにわかった。正気に戻ったレイチェルはどう声をかけていいかわからず思考を巡らせるがアリスの足元に転がっている「それ」に自然に目がいった。きっかけを見つけたのだ。こんな形ではあるが。
「…あー…あはは、こんなもんがあったら進みづらいよな。」
どこかぎこちないがいつもどうり屈託のない笑顔で手を差し出した。
「ほら、こっちに……」
「嫌…ッ!!」
アリスは思わずその手を払った。
――――――――…
「ここからじゃあ全く見えないな…」
迷路から少し離れたベンチでゲームには不参加のシフォンはトーストを頬張り、フランネルは膝を抱えてめずらしく起きて、それぞれゲームを観賞していたが中の様子まで伺うことは無理だ。
これを聞き付けたのだろう。城の窓からは観客が騒いでいる。上からはさぞかし眺めがいい、二人は観客の応援からゲームの状況を知る事しか出来ない。
「…そういえばレイチェルの奴、アレを使ったのかしら…」
フランネルがぼそぼそと呟く。シフォンには彼女のいうアレがすぐにわかった。
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